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韓国進出の成功事例

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すべての人のためにより健康でより良い世界を築く
作成日
2022.11.08
To Create a Better, Healthier World for All People

小さいが強い組織を作る革新的新薬、「完治」に挑戦する。

1987年、米国で設立されたギリアド・サイエンシズは医薬的要求が満たされていない分野で革新的な治療薬を研究・開発し、商用化するバイオ製薬会社です。2011年に設立されたギリアド・サイエンシズ・コリアはギリアド・サイエンシズのアジア初の法人です。ギリアド・サイエンシズ・コリアは2019年に10種の肝臓病治療薬、HIV/AIDS治療薬、抗真菌免疫疾患治療薬を発売して1,707億ウォンの国内売上を達成し、革新的新薬の開発と供給の先頭に立っています。
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ギリアドのように!ギリアドを学ぼう

2009年の新型インフルエンザの大流行とともに一般人にも聞きなれている薬、「タミフル」。数多くの命を奪った新型インフルエンザを軽いインフルエンザ程度に管理できるようにしたタミフルはギリアド・サイエンシズ(以下、ギリアド)が開発しました。

米国カリフォルニアのフォスター市に本社を置くギリアドは、医薬的な要求が満たされていない分野で革新的治療薬を研究・開発し、商用化するバイオ製薬会社です。1987年、29歳の医者マイケル・リオルダンが設立した会社からスタートし、設立27年目の2014年に売上248億9,000万ドル(約28兆ウォン)を記録して世界10大製薬会社に仲間入りしました。現在、世界の140ヵ国で1,400万以上の人がギリアドが作った治療薬を服用しています。小さなベンチャー企業からスタートし、短期間で世界10位内の製薬会社に成長した秘訣は何でしょうか。ギリアド・サイエンシズ・コリアのイ・スンウ代表はギリアドの成功要因を選択と集中だといいます。

「タミフルを開発する時、ギリアドは社員が300人しかない小さな組織でした。当時は二つの革新的な新薬候補物質を開発中でしたが、一つはタミフルで、もう一つはエイズを引き起こすHIVの治療薬「ビリアード」でした。その時、一つだけ選択することにしてビリアードに集中し、タミフルは多国籍製薬会社のロシュに技術移転をしました。ギリアドは最初から選択と集中でうまくできる部分にのみすべての力を投じてきました」

ギリアドは少数精鋭を掲げています。世界の役員社員が12,000人と比較的に小規模でありますが、効率的な組織を追求しています。しかし、2019年基準のグローバル総売上は27兆ウォンと一人当たりの売上は製薬業界で圧倒的な1位となっています。小さな組織を追求してこそ融通の利く迅速な意思決定が可能です。生産の2/3を外注に回し、会社全体が新薬開発に向けた研究に没頭しています。

ギリアドは抗ウイルス領域での専門性に基づいて人類の命を脅かす病気の治療薬の研究と開発に力を入れています。2019年基準で年間の研究・開発投資費用だけで約91億ドル(約10兆ウォン)であり、世界的に29件のパイプライン開発を進めています。HIV/AIDS、肝炎や抗がん剤を中心に約400件の第2相、第3相の臨床研究に投資しています。

ギリアドはこれまで買収合併によって領域を広げてきました。1999年に抗真菌薬「アムビゾーム」を有するネクスタ社を買収し、販売収益で新薬開発の土台と欧州進出の橋頭保を築き、2012年にはC型肝炎薬「ソバルディ」と「ハーボニー」の開発会社であるファーマーセット社を買収しました。

短時間でソバルディの第3相臨床試験を終え、ハーボニーを発売し、能力を証明しました。2015年16兆ウォンの売上を出したハーボニーは、同年世界で最も多く処方された医薬品になりました。

設立以来、ひたすらウイルス疾患の治療薬の開発にこだわってきたギリアドは、26の治療薬だけで2019年グローバル総売上高220億ドル(約27兆ウォン)、時価総額956億ドル(約117兆ウォン)のグローバルトップクラスの製薬会社として急速に成長しました。2011年3月、ギリアドの韓国法人であるギリアド・サイエンシズ・コリアが設立されました。アジア初のギリアド社の法人です。

「ギリアドは非常に小さな会社だったので最初はアメリカにだけ重点を置きました。ところが1990年代末にネクスタ社を買収して、欧州に支社を置いたのです。その後、約10年が過ぎてからアジアに進出し、まず最初に韓国に法人を設立しました。韓国は全国民医療保険が施行されている国です。その分、市場が大きいので、一応、許可を得て販売が始まるとある程度は成長できるという魅力があります。また、ギリアドが集中していたB型肝炎において需要が多いことも韓国進出を選択した理由の一つでした」とイ・スンウ代表は語ります。

現に、ギリアドは業界からの熱い関心の中で、B型肝炎の耐性発現率が特に高い韓国に、患者と医療陣が非常に待ち望んでいたビリアードを持って進出しました。

2012年、韓国保健福祉部はギリアドを米国のファイザー、イスラエルのテバとともに「革新型製薬企業」ロールモデルに選定しました。大規模なグローバル製薬会社より規模は小さいが、強力な技術力に基づき積極的なライセンス・アウト(知的財産権のある商品や財貨の販売を他社に許可する制度)を通じて成長した過程が、韓国の製薬会社の特性に よく合っているという判断からでした。韓国の革新型製薬会社は「ギリアドのように!(Like Gilead)」と叫びながら我勝ちにベンチマークに乗り出しました。
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1,000億ウォンものメガ・ブロックバスターを作る

ギリアドの韓国進出が決まり、韓国支社の初の代表が公表されたとき、製薬業界の関心はさらに大きくなりました。「ミダスの手」と呼ばれるイ・スンウ氏が代表だったためです。韓国MSD、韓国アストラゼネカ、韓国ワイスの代表を歴任し、そのすべての企業を大きく成長させたイ代表はギリアド・サイエンシズ・コリアでもその神話を作り続けました。ビリアードを1,000億ウォンものメガ・ブロックバスターにし、ソバルディなどでC型肝炎治療薬市場をリードしたのです。その外にも韓国初の単一配合錠のHIV治療薬とインターフェロンフリー経口C型肝炎治療薬など、パラダイムの変化を導いた革新新薬の市場への定着に成功し、世界から得た名声を証明しました。しかし、イ・スンウ代表がギリアド・サイエンシズ・コリアを発足させた際に掲げたのは売上よりは価値でした。

「2013年にギリアドに来た時、当時30人程度だった全社員が集まって一緒にビジョンを作りました。いろんな会社から集まった多様な経歴の社員を一つにまとめなければなりませんでした。私たちは「5年後にこの会社にどんな会社になってほしいのか」というテーマで多くの討論を行い、「韓国で最も科学的かつ倫理的で、患者中心の会社になる!」というスローガンを導き出しました。最も科学的かつ倫理的で患者中心の企業になるというビジョンは、売上の規模と関係なく、一度チャレンジしてみる価値があるものだと思いました。そこからスタートしたのですが、設立して5年も経たないうちに早くもHIV、B型肝炎、C型肝炎市場のリーダーになりました。本当にやりがいがありました。社員と共にビジョンを共有することが特に良かったと思います」とイ・スンウ代表は語っています。

ギリアド・サイエンシズ・コリアは研究・開発を直接行ってはおりません。小さいが強い組織という原則の下で韓国でパートナーシップを多く活用しており、ユハンヤンヘンとは長い間パートナーシップを締結しています。ユハンヤンヘンとギリアドは既に数回にわたる戦略的な提携を通じて韓国のHIV患者に「スタリビルド」、「ゲンボイヤ」のような革新的な新薬を供給してきました。ユハンヤンヘンはギリアドのグローバルCMO(医薬品製造受託機関)の中で最も大きなパートナーです。

2019年1月には、ユハンヤンヘンと非アルコール性脂肪性肝疾患(NASH)治療の新薬候補物質のライセンスと共同開発のために、7億8,500万ドル(8,800億ウォン)規模の技術輸出契約を締結しました。ユハンヤンヘンはギリアドと非臨床研究を共同で行い、ギリアドはグローバル臨床開発を担当します。

また、ギリアドは全世界で事業化を進めており、ユハンヤンヘンは韓国での事業化を担当しています。二社の長きにわたるパートナーシップと韓国支社の橋渡し役がこのような大型契約を可能にしました。2020年現在、70人の各分野の専門家が素晴らしいチームワークで活動しているギリアド・サイエンシズ・コリアは、国内臨床試験と研究に投資し、韓国の保健医療インフラの発展はもちろん、国内に革新的新薬をいち早く供給するために努力しています。

最初の米FDA承認の新型コロナウイルス感染症治療薬、レムデシビル

2020年1月、中国武漢から肺炎のニュースが聞こえてきました。1月23日、武漢肺炎の原因が新型コロナウイルスであることが分かり、武漢はシャットダウンされました。その時までも人々は一年以上続く新型コロナウイルスによるパンデミックを想像すらしていませんでした。しかし、その時点でギリアドのリサーチチームは迅速に動いていました。ウイルスに特化された企業であるギリアドには抗ウイルス化合物のライブラリーがあり、これまで研究してきた数多くの結果物を検討し始めたのです。

分析の結果、10年前からエボラ治療薬として開発したものの効能が立証されず中断されていた「レムデシビル」が新型コロナウイルス感染症の治療薬として機能することができるという結論が出ました。蓄積された研究・開発の歴史の中から見つけ出した賜物でした。3月に臨床試験をはじめ、米国食品医薬局(FDA)が5月にレムデシビルの緊急使用を承認しました。レムデシビルは以後、世界の至るところで新型コロナウイルス感染症の治療薬として使われています。米国のドナルド・トランプ大統領が新型コロナウイルス感染症の治療を受けたときにも投与され、マスコミから関心を集めました。

「治療薬の歴史になかったことです。こんなに短期間で世界的に臨床試験を行ない、製造をし、供給をした歴史はありませんでした。私たちはこれを会社の利益の観点からみたのではなく、公衆保健の危機であり、人類の危機であると見て、役に立てることがあれば何でも早く行うべきだと判断しました。ギリアドは抗ウイルス治療薬の専門企業なので『誰かが開発するのなら、それは我が社だ!』というミッションを持って臨みました」とイ・スンウ代表は説明します。

「もちろん、ギリアドだけの能力で遂げられたことではありません。他の選択肢のない緊急な状況の中で許可当局も緊密にパートナーシップを発揮して動いたからこそ可能だったことです」とイ・スンウ代表は付け加えました。

2020年5月、レムデシビルは新型コロナウイルス感染症の治療薬として米国で緊急使用が承認されて以来、10月には米国FDAから正式承認を受け、世界初の新型コロナウイルス感染症治療薬として公認されました。供給能力の拡大のために初期に投資したおかげで、あの時点ではすでに米国全域にある病院で使用することができました。ギリアドは、最大限多くの患者を迅速に責任感のある方法で助けることを目標にして、2020年末までレムデシビルの開発と工程に10億ドル(約1兆2,000億ウォン)を投資し、供給量を拡大するために努力しました。

ギリアド・サイエンシズ・コリアも新型コロナウイルス感染症の拡大初期から疾病管理庁と食品医薬品安全処をはじめとする許可当局と緊密にコミュニケーションを取りながらレムデシビルの供給のために力を入れました。薬品として許可を得るまでは、全世界の新型コロナウイルス感染症の患者に治療薬を使う唯一なルートは臨床試験しかありませんでした。韓国の場合も臨床試験に参加しなければ患者にレムデシビルを使うことができませんでした。

「韓国は世界で6番目に臨床試験を多く行う国で、ソウルは世界で臨床試験を最も多く行う都市です。ソウルの人口は1,000万人で、首都圏を合わせれば、2,000万人に上ります。それに大型病院が位置しており、その病院の水準やお医者さんの臨床研究に対する情熱が非常に高く、ギリアドだけでなく多くの多国籍企業が韓国でグローバル臨床試験を進めています。これまでの経験が新型コロナウイルス感染症の状況でも役に立ちました」とイ・スンウ代表は述べています。

数十錠の薬をたった一錠に!

ギリアドは韓国支社が設立される前の2010年に「ツルバダ」の韓国承認を得ました。これを皮切りに2019年7月、「ビクタルビ」まで、ここ10年間治療薬を韓国内に供給して国内エイズ市場を主導してきました。他の企業でもエイズ治療薬を作りましたが、ギリアドはそこに革新を加えました。ギリアドのエイズ治療薬は配合錠の形にして一日一回の服用で済ませるようにしたのです。多ければ30~35錠を服用していた従来の薬を1~2錠に減らしました。世界で初めて数十錠の治療薬を一日たった1錠に精製することに成功しました。

2018年にはツルバダが「HIV‐1暴露前予防内服療法(Pre-exposure prophylaxis)として許可を受け、エイズ予防時代を開きました。「我々が頑張らなければならない。我々以外にこれを成し遂げる者はない」というギリアドの科学者の使命感とプライドが作り上げた成果です。

ギリアドはB型肝炎とC型肝炎治療薬分野でも革新的な結果物を開発しました。B型肝炎治療薬のビリアードの耐性率は0%です。8年間の臨床試験の追跡の結果、耐性発現率が0%であることを確認しました。ギリアドが開発したC型肝炎治療薬のソバルディは国内臨床試験の結果、97%、ハーボニーは投与時に99%の完治率を示しました。今はC型肝炎が発生してもたったの12週間の服薬で100%近く完治します。これまで治療が難しかったC型肝炎に「完治」というパラダイムをもたらしたわけです。世界保健機関(WHO)は2030年までC型肝炎を撲滅するという目標を掲げています。ギリアドによってその目標にかなり近づくことができました。

イ・スンウ代表は、「製薬会社の存在の意義はまさにこのような新薬を開発することにあると思います。個人的に私の父もC型肝炎で亡くなりました。当時は薬がなかったのでC型肝炎で愛する家族を失うことは少なくないことでした。ギリアドは今エイズのない世界を夢見ています。それが10年になるか20年になるかはわかりませんが、完治できる治療薬の開発を目指しています」と語ります。

「しばしば、ギリアドはエイズ新薬の特許が残っているのになぜ新薬を開発し続けているのかと聞かれます。しかし、私たちは患者のための新薬は引き続き開発すべきだという信念を持っています。B型肝炎の場合も同じです。完治すれば患者はいなくなりますが、ギリアドは絶えず、患者のために科学を中心にして革新し、努力しています」とイ・スンウ代表は付け加えました。
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患者中心の企業が希望のメッセージを伝える方法

社会的偏見は病気の終息を妨げます。新型コロナウイルス感染症の場合も他人からの非難を恐れて症状を隠し、嘘をついていた人の例がありました。エイズの場合はより深刻です。WHOには「90 90 90」という言葉があります。90%がスクリーニング(集団検診)を受け、90%が治療を受けてこそ、90%のウイルスがなくなるということです。

ギリアド・サイエンシズ・コリアは韓国社会の良いパートナーになるために、発足と同時に支援が必要な健康の死角を多角的に検討し、持続的に社会的責任を履行しています。毎年、10月20日の「肝臓の日」には多様なイベントを開催し、肝臓病に対する理解度を高めています。

また、「韓国・アフリカB型肝炎イニチアチブ(ASOKOBI)」を通じて韓国とアフリカの公衆保健専門家と共に韓国のB型肝炎対処成功事例を共有し、B型肝炎の克服に向けた協力を約束する場を設けました。

その外にも毎年、異なるテーマで健康面での弱者階層を支援する「幸福分かち合い」、役員・社員の歩みが患者の治療費となる「We can’t、We canチャレンジ・キャンペーン」、「訪れる多文化家庭検診事業」、「同性愛者HIV/AIDS検診事業支援」などがあります。このような持続的な社会貢献活動で2019年7月、「第6回愛の分かち合い社会貢献大賞」授賞式で保健福祉部長官賞(社会福祉部門大賞)を受賞しました。

ギリアドは責任感(Responsibility)、パートナーシップ (Partnership)、持続性(Sustainability)、適応性(Adaptability)の4つの原則に基づいて社会貢献活動を展開し、全世界の患者が経済的都合や地域の限界を超えて治療が受けられるよう、治療薬アクセスの強化にも最善を尽くしています。

低所得国家では医薬品アクセスを高めるために、当該地域のジェネリック会社とパートナーシップを結び、「特許寄付」モデルを活用します。これを通じて、アフリカ諸国をはじめとするタイ、インドなどの1,000万人を超える患者が手頃な価格でエイズ治療薬を供給されます。このような努力で低所得、中所得国家の約870万人のエイズ感染者がギリアドの治療薬の恩恵を受けています。また、ここ9年間ジェネリックの薬価が約80%減少し、患者一人当たりの一ヵ月間の治療費用が3.5ドルにまで下がりました。エジプトなどは最貧国で慢性C型肝炎の有病率が高いですが、同じ特許寄付モデルを利用して100万人以上のC型肝炎患者が完治しました。

「ギリアド」という名前は中東地域で患者の治療に使われた木の名前から名付けたものです。ギリアドのロゴにある葉と盾はギリアドの木から出る軟膏のように病気に悩まされる患者に希望を与えることを意味します。葉は命を脅かす病気の治療と科学を通じた進展を意味し、盾は病気からの保護を意味します。より多くの人が病気から自由になるよう、革新的新薬の開発と拡大のためにギリアドは今現在も休まずに働いています。

出所: 「フォーカス・オン・コリア(ISBN: 979-11-6490-986-5(93320))」から抜粋。146-158ページ。 KOTRA 2021.

写真) ギリアド・サイエンシズ・コリアは「幸福分かち合いプロジェクト」を通じて疎外された人々のために多様な活動を行っています。

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