韓国進出の成功事例
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リスクに立ち向かう
マーシュコリアの保険仲介及びリスクマネジメントサービスは、韓国の経済成長に伴い拡大してきた。
同社CEOのSvein R. Tyldum氏は2011年3月の東日本大震災直後、日本を訪問した。リスクマネジメント専門家の彼は、日本企業が直面していた最大のリスクが建物崩壊や物理的損傷ではなく、サプライチェーン(供給網)の寸断ということに、非常に驚いたという。
たとえば、供給会社Aがあるとする。Aは製品aを生産する世界唯一の会社だが、大震災により工場の運転が休止し、aの供給も2~3ヶ月間中断されてしまった。
このような理由からTyldum氏は、今日企業が直面する最大のリスク要因として、サプライチェーンとサイバーセキュリティを挙げている。
さて、保険加入以外にリスクを解消できる方法にはどのようなものがあるのか。それは、マーシュのような会社にコンタクトを取ることだ。保険仲介及びリスクマネジメント分野の世界的リーディングカンパニーであるマーシュはニューヨークに本社を置いており、米国企業や多国籍企業が韓国に進出し始めた1979年に韓国事務所を設立した。
Tyldum氏は「多国籍企業の韓国進出と事業拡大を受け、当社は現場で彼らをサポートするため、韓国に事務所を設立しました」と説明する。マーシュコリアの初期顧客の9割以上は多国籍企業、または韓国企業との共同出資による合弁会社だった。しかし現在は顧客の7割以上が韓国企業で、残りは多国籍企業となっている。
マーシュ・アンド・マクレナン(Marsh & McLennan Companies)傘下のグローバル企業4社(マーシュ、ガイ・カーペンダー、マーサー、オリバーワイマン)のうちマーシュは、保険仲介・リスクコンサルティングサービスとソリューションを提供し、多様な分野に対する諮問、保険仲介及び請求管理サービスを取り扱う。マーシュコリアの主力事業は、インフラ・エネルギーに対するリスクマネジメントサービスであるが、最近は海洋関連リスクから職員の福利厚生、そして類似保険に至るまで、多様な分野を手がけている。
リスクマネジメントとは、顧客企業のリスク要因を把握し、そのリスクに対して十分な対策を取ると共に、適切な保険商品に関する諮問に応じることを意味する。また、マーシュコリア最高執行責任者(COO)のHank Lee氏によると、リスクマネジメントは保険会社と被保険者間の関係を改善して、被保険者が自分にとって最も適切な保険を確認し、保険会社との契約が自分の利益になるかどうかについて把握できるようにサポートすることだ。
「被保険者は保険専門家である保険会社に比べ、保険に関する専門知識に乏しいです。従って、保険会社と被保険者間の契約は公平とは言えません。そこで当社は、顧客が私たちほどの専門性を持つことができるようサポートしています」と、Hank Lee氏は説明する。
Tyldum氏やスタッフたちは、3段階の業務プロセスを構築している。マーシュコリアはまず、顧客企業のリスクについて「定義」する。そのリスクは物理的、政治的、または名誉に関わる問題であったり、貿易信用や貿易収支と関係があるかも知れない。その後、マーシュコリアは適切なリスクマネジメントプログラムを「設計」する。一般的な方法は保険証券を作成した後、顧客企業のリスクを保険会社に移転することだ。分析過程を通じて、全体的な観点から顧客の総合的なリスクを診断した後、自家保険を利用する方法もある。最後に、マーシュコリアはリスク解消に最も適した保険商品を顧客に「紹介」する。
マーシュコリアは顧客の保険加入をサポートするだけではない。たとえば、マーシュコリア所属の専門エンジニアが顧客の精製工場を訪問して、消防施設の設置や火災時の避難計画について確認することもできるが、これは顧客をさらに安全に保護し、保険料も節約できる方法だ。機関や産業によって直面するリスクが異なるため、マーシュコリアは顧客のニーズを満たすことのできる多数の専門家を保有している。
マーシュコリアは海外への事業拡大を図る企業のリスクマネジメントも手がけている。海外進出を計画している企業は、進出先国のリスク要因をまず把握する必要がある。マーシュコリアは約100ヶ国のマーシュ支社との協力の下、積極的な支援を行っており、韓国事務所のスタッフもロンドンや上海、シンガポール、シカゴ、ニューヨーク、ロサンゼルスなどのマーシュの主要支社に派遣されている。
Tyldum氏は「国内でのみ活動する企業は、リスクマネジメントを直接行うことができます。しかし、これらの企業が海外進出を図る場合は、私たちの専門性が必要になってきます」と話す。マーシュコリアの売上高、顧客数、リスクマネジメント件数は、過去35年間着実に増加してきた。
「リスク要因の進化に伴い、顧客の方々は私たちにより多くの諮問を行っています。従って技術力をさらに強化していかなければなりません」。Tyldum氏は韓国の主要産業や貿易額の増加、今年発効を予定している韓中FTAなど52カ国とのFTAを土台に、マーシュコリアは今年二桁の成長を記録し、このような傾向は続くだろうと予測した。国際貿易の拡大はより多くの韓国企業の海外進出を意味する。これに伴い、マネジメントが求められるリスク要因も増加することになる。
「マーシュコリアはマーシュの重要な事業所になるでしょう。マーシュは韓国市場について、非常に楽観的に見ています」と、Tyldum氏は付け加える。
By Chang Young (young.chang@kotra.or.kr)
Executive Consultant / Invest Korea
ㆍ「世界リスク知覚調査2013-2014(Global Risks Perception Survey 2013-2014)」によると、「2014年最も懸念されるグローバルリスクトップ10」には、主要経済国の財政危機、構造的に高い失業率/不完全雇用、水の危機、所得格差の拡大、気候変動の緩和・適応の失敗などが含まれている。