産業フォーカス
- Home
- 有望産業·立地
- 最新産業情報
- 産業フォーカス
バイオ医薬品産業は、世界的に高齢化が進み健康志向が高まる中、世界市場で成長を続けている。また、代表的な高収益・高付加価値産業でもあることから国の成長エンジンとして重要性が高く、世界各国で継続的な投資拡大と戦略的な育成が行われている。韓国でもバイオ医薬品市場は二桁の高い成長率を示しており、政府及び民間の投資が活発で、将来は国家戦略産業に成長すると予想される。
韓国の医薬品産業
韓国の医薬品産業は、2013年に前年比0.3%増の19.291兆ウォン(173億米ドル)1)規模となり、2008年から2013年までの5年間における年平均成長率は2.3%である。2010年まで韓国市場が世界市場より高い成長率を示したことを考えれば、成長速度は鈍化したといえる。しかし、韓国の医薬品市場は世界的な経済危機にもかかわらず堅実な成長を見せている。
特に、2010年から成長が伸び悩む中でも、韓国の医薬品生産額が2013年に16.2兆ウォンと前年比で4.1%増加したことは、注目に値する。韓国製薬会社の医薬品輸出は、2008年から2013年にかけての年平均成長率が13%で、世界市場における存在感を増している。
一方、韓国の医薬品輸入は2013年に前年比10%減の5.2兆ウォンとなり、貿易赤字の大幅な縮小に貢献した。
韓国医薬品産業の2013年雇用規模は前年比5.1%増の78,259人で、3,782人増加した。これは医薬品業界の雇用が増加に転じたことを示し、2010年以降の減少傾向に歯止めがかかり、韓国医薬品産業の事業に弾みがついたことを意味する。
医薬研究者は5,437人で、韓国医薬品産業の雇用全体に占める割合は6.9%である。このうち70.2%が修士号または博士号を取得しており、研究陣は高度に熟練した人材で構成されている。 結論をいえば、韓国医薬品産業は全般的に緩やかな成長を見せている。韓国の製薬会社が着実に競争力を伸ばす中、韓国の産業は輸出と生産量が増加して貿易赤字を急速に減らしている。
韓国医薬品産業の推移
区分 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | YoY | 5年間のCAGR |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
生産 | 13,893,810 | 14,788,387 | 15,569,588 | 15,440,251 | 15,560,663 | 16,191,845 | 4.1% | 3.1% |
輸出 | 1,255,891 | 1,772,242 | 1,770,059 | 1,943,493 | 2,309,534 | 2,318,522 | 0.4% | 13.0% |
輸入 | 4,319,756 | 4,953,881 | 5,108,911 | 5,447,053 | 5,728,874 | 5,155,829 | -10.0% | 3.6% |
貿易収支 | -3,063,865 | -3,181,639 | -3,338,852 | -3,503,560 | -3,419,340 | -2,837,308 | -17.0% | -1.5% |
市場規模 | 16,957,675 | 17,970,026 | 18,908,439 | 18,943,812 | 18,980,003 | 19,029,152 | 0.3% | 2.3% |
韓国のバイオ産業
韓国のバイオ産業は2013年に7.52兆ウォン規模となり、内需と輸出が前年比で5.3%増加した。2009年から2013年にかけての年平均成長率は8.9%と高かった。
生産額においてはバイオ食品部門が最も大きく、2013年の年間生産額は3.21兆ウォンでバイオ産業全体の40%を占めた。二番目に大きいのはバイオ医薬品部門で、年間生産額は2.78兆ウォン。生化学とその他バイオ部門は絶対生産額では規模が小さいものの急速に増加しており、バイオ産業全体の生産額増加に貢献すると期待される。
韓国バイオ産業の生産額 (国内販売+輸出)
(単位 : 百万ウォン)
年度 | 生産 | 総規模 | バイオ医薬品 | 生化学 | バイオ食品 | その他 |
---|---|---|---|---|---|---|
2011 | 国内販売 | 3,646,896 | 1,506,329 | 355,684 | 1,065,8343 | 719,049 |
輸出 | 2,749,356 | 954,412 | 74,783 | 1,531,965 | 188,195 | |
2012 | 国内販売 | 4,068,644 | 1,577,572 | 408,226 | 1,261,325 | 821,521 |
輸出 | 3,060,585 | 1,139,980 | 97,173 | 1,610,631 | 212,802 | |
2013 | 国内販売 | 4,357,396 | 1,636,942 | 451,091 | 1,338,933 | 930,430 |
輸出 | 3,166,435 | 1,138,462 | 111,110 | 1,682,131 | 234,731 | |
YoY | 国内販売 | 7.10% | 3.76% | 10.50% | 6.15% | 13.26% |
輸出 | 3.46% | -0.13% | 14.34% | 4.44% | 10.30% | |
2009-2013(CAGR) | 国内販売 | 10.64% | 1.14% | 14.73% | 47.36% | 11.51% |
輸出 | 3.79% | -1.50% | 12.28% | 23.53% | -10.84% |
韓国のバイオ市場は2013年に前年比6.1%増の5.87兆ウォン規模となり、2009年から2013年にかけての年平均成長率は8.5%である。
部門別に見れば、生化学は前年比8.5%増と最も急成長した。その他バイオ部門については、バイオエレクトロニクスと生物環境がそれぞれ前年比で53.8%、9.6%の増加となり、国内販売はそれぞれ373億ウォン、303億ウォンと低めだが、高い成長率を示した。 .
国内販売実績で見れば、バイオ医薬品の販売が最も多く、バイオ市場全体の50%を占めている。しかし、バイオ医薬品の成長率は他部門に比べて鈍化傾向にあり、バイオ食品と生化学が高い成長率を示している。バイオ市場はバイオ医薬品にとどまらず、生化学やバイオ食品、その他部門へと多角化しながら成長すると予想される。
韓国でバイオ産業に従事する企業数は、2011年の958社から2012年には971社へと13社増え、増加傾向にある。部門別に見れば、バイオ企業数はバイオ医薬品、生化学、その他部門で増加しているが、バイオ食品部門ではやや減少した。
2013年におけるバイオ企業の雇用者数は38,197人で、2012年より627人増加した。バイオ企業1社につき平均39.3人雇用していることになる。
研究者の雇用人数は11,605人で、韓国バイオ産業従事者全体の30.4%を占めている。このうち60%は修士号または博士号を取得している。バイオ産業従事者は、医薬品産業と同じく熟練者で構成されている。
産業の展望
世界的に高齢化が進み健康的なライフスタイルへの意識が高まっていることから、医薬・バイオ分野の世界市場は着実に拡大している。
世界医薬品産業の規模は2012年に前年比2.4%増の9,590億米ドルとなり、2007年から2012年にかけての年平均成長率は5.3%と高かった。これは金融危機以前の8%に比べればまだ低い。しかし、アジアで高齢化に伴い国の医療費と医療需要が増えたことから、世界的な景気停滞の中でも世界の医薬品産業は成長を続けてきた。
世界のバイオ市場は、2012年に1.18兆米ドル規模に達した。これは非常に有望な市場であり、2015年には1.57兆米ドル規模に成長して2010年から2015年にかけて9.7%の年平均成長率を示すと予想されている。
一方、医薬品・バイオ産業は、BIT(バイオ情報技術)などの融合技術による新事業が今後の発展をリードすると予想される。
世界バイオ市場の規模と成長の見通し
年度 | 価値 (単位: 10億米ドル) |
成長率 | |
---|---|---|---|
YoY | CAGR | ||
2010 | 987.2 | 9.1% | 9.7% |
2011 | 1,079.0 | 9.3% | 9.7% |
2012 | 1,181.5 | 9.5% | 9.7% |
2013 | 1,298.4 | 9.9% | 9.7% |
2014 | 1,434.7 | 10.5% | 9.7% |
2015 | 1,572.4 | 9.6% | 9.7% |
ユビキタス医療産業がIT関連の革新的な技術によって出現し、遠隔で健康管理や相談、治療ができる携帯用診断装置などの新しい医療機器市場を生み出した。個別化医療市場は、2010年の337億米ドルから2015年には639億米ドル規模に成長すると予想される。
DNA解析技術の目覚しい進歩により、DNA塩基配列決定とタンパク質解析をベースにしたチップや診断キットなどが主要製品分野になると予想される。
バイオセンサーやバイオマーカーの導入といった予防医学部門は、病気の予防を目的とした速やかな診断と早期発見を可能にする製品の需要が高まっていることから、成長が期待される。個別化分子標的治療とコンパニオンバイオマーカー(コンパニオン診断)の発展が、医薬品産業の新しいビジネスモデルになると予想される。
全般的に、汎用的な製品から個別化医療製品へのシフトが加速化している。
薬物治療と管理においては、すべての患者に画一的な治療を施す慣例から抜け出し、個人の遺伝子情報と身体的特性を考慮するようになる。こうした流れは一塩基変異の検出、精密診断、モニタリングといった部門の発展につながり、これによって薬物反応性の予測が可能となり、試行錯誤と副作用を回避する体制を整えることができる。
韓国のバイオ医薬品産業が世界市場に占めるシェアはまだ小さいほうである。しかし、内需と輸出は世界市場より急速に成長しており、政府及び民間の投資拡大と成長への意志が強いため、今後は世界市場での競争力が高まると期待される。
By ムン・ヘソン研究員
KIET先導産業研究チーム / hsmoon@kiet.re.kr
1) 2015年3月10日現在の為替レートで換算
< 本稿の内容は、筆者の個人的見解であり、 必ずしもKOTRAが所属する組織の見解ではありません。>