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[その他] OTTプラットフォームと韓国のオリジナルコンテンツ
作成日
2025.06.09

OTTプラットフォームの現状

スマート機器とインターネットの発達で世界的にメディアの利用形態が変わるにつれ、OTT(Over The Top)市場の規模は迅速に拡大している。グローバル市場調査機関であるグローバルインフォメーション(Global Information, GII)によると、OTT市場の規模(2024年基準)は5,423億ドルと推定される。また、2024~2030年には年平均37.1%成長し、2030年には約3兆6,000億ドルに上るものと予測される。韓国でもOTTサービスの利用率が着実に増え、2020~2024年に年平均5.4%増加した。

米国の場合、ケーブルテレビ、衛星放送、IPテレビなどの有料テレビ加入者は2013年83%から2023年64%に減少した。1) 韓国でもOTTの利用増加や1人世帯の有料テレビ加入率の不調などの影響で有料テレビ加入世帯の比率が減少している。2023年12月時点の有料放送加入者総数は3,630万端子であり、2016年以降成長率2)が持続的に下落3)した。一方、OTTサービスの利用率は72.2%(2020年)から89.2%(2024年)へと着実に増加する傾向にある。このように世界的に有料放送を解約するコードカット(Cord-cutting)と有料放送の加入経験のないコードネバー(Cord-Never)現象が拡大し、OTT市場はさらに成長するものと見込まれる。
図1. グローバルOTT市場の規模及び韓国の OTTサービスの利用率推移

글로벌 OTT 시장 규모 및 국내 OTT 서비스 이용률 추이

* 資料:(左)https://www.giikorea.co.kr/report/tsci1667886-over-top-market-global-industry-size-share-trends.html,
(右)情報通信政策研究院(2025.1.30.)、「2024年韓国メディアパネル調査の主要結果」、「KISDI STAT Report」、vol.25-1、p.1を参照して作成
世界のOTT市場はNetflix(ネットフリックス)、Disney+(ディズニープラス)、AppleTV(アップルテレビ)、Amazon prime(アマゾンプライム)などのグローバルOTT企業間の競争が激しさを増している。韓国のOTT市場でもNetflixが市場をリードする中、ワイズアップ.リテールによると、韓国で最も利用者数が多いOTT(2025年1月基準)はNetflix(1,416万人)、Coupang Play(クーパンプレイ)(760万人)、TVING(ティービング)(626万人)、Wavve(ウェーブ)(272万人)、Disney+(ディズニープラス)(236万人)の順となっている。4)

韓国のOTTプラットフォームが利用者確保のために多様な戦略を示しているが、グローバルOTTプラットフォームに比べてコンテンツや資本などが足りず競争に難点がある。つまり、利用者を確保するためにはプラットフォーム別に差別化されたオリジナルコンテンツが必要であるが、グローバルOTTに比べてそれを制作する資本と環境が足りないためだ。これを受けて政府も韓国OTTプラットフォームの競争力を強化するために2028年までに1兆ウォン規模の「Kコンテンツメディア戦略ファンド」を造成して支援する計画である。なお、韓国コンテンツ振興院はTVING、Wavve、Coupang Playなどの韓国OTTプラットフォームと連係し、ドラマ、非ドラマに分類して制作費を支援している。

韓国コンテンツに対するグローバルOTTの投資

グローバルOTTプラットフォームは差別化されたオリジナルコンテンツを制作することで利用者を拡大している。特に文化コンテンツは文化的割引(Cultural Discount)、つまりある国で制作されたコンテンツが他の文化圏に拡散する時に文化や言語の違いによって価値が下がる分野である。それによってNetflix、Disney+の場合、進出国の文化的な情緒を反映した現地化戦略を通じてコンテンツを制作する流れとなっている。

また、グローバル市場でKコンテンツが逆光を浴び、韓国のオリジナルコンテンツ制作が拡大されている。代表的な例に、Netflixのオリジナルコンテンツであるイカゲームのシーズン1は約2,140万ドルの制作費が投入され、創出価値は約9億ドルと推定される5)。これは制作費に比べて約40倍以上の利益が生み出されたものと評価される。このような成功に後押しされ、Netflixは2023~2026年の間、韓国コンテンツに計25億ドルを投資すると発表した6)。グローバル市場で韓国コンテンツが注目されるにつれ、オリジナルコンテンツの制作本数も急激に増えている。2018年4つに過ぎなかった韓国オリジナルコンテンツが2025年には32本に増える見通しである7)。現に、2025年5月5日~11日の間に 「弱いヒーローClass 2(Weak Hero: Class 2)」、「君は天国でも美しい(Heavenly Ever After: Limited Series)」、「いつかは賢いレジデント生活(Resident Playbook: Limited Series)’、「デブルスプラン2(The Devil's Plan: Season 2)の4つのコンテンツが非英語圏コンテンツトップ10入りしている8)

Disney+も2021年11月、韓国で公式配信サービスを始めて以来、韓国コンテンツへの投資を本格化している。2023年8月に配信開始された「ムービング」は、韓国オリジナルコンテンツの中でも最も多くの視聴時間を記録した作品となり、2023年第4四半期には700万人の加入者を確保するのに貢献した9)。 2023年基準で上位15のコンテンツのうち9本は韓国コンテンツであり10)、 これはプラットフォーム内で韓国コンテンツに対する関心が増加していることを示す。2025年には「トリガー」、「ナインパズル」、「北極星」など8本の韓国オリジナルコンテンツを配信する予定だ。Disney+は韓国動画コンテンツを確保するためにスタジオ&ニュー、キーイーストのような韓国制作会社とパートナシップを強化している。

結果的にグローバルOTTプラットフォームの韓国コンテンツに対する投資は韓国のドラマ、映画などの動画コンテンツのグローバル市場進出と利用者の裾野の拡大に役立っている。また、オリジナルコンテンツはドラマだけでなく芸能コンテンツに拡大され、多様なジャンルの韓国動画コンテンツが海外に進出するチャンスが産まれた。

展望及び示唆点

OTTプラットフォームは独占可能なオリジナルコンテンツ制作に注目し、自社のIP確保に集中している。「イカゲーム」、「今、私たちの学校は」、「ムービング」、「パチンコ」など、韓国の動画コンテンツに対するグルーバル需要が増加し、この分野への投資はさらに拡大するものと見込まれる。特に、韓国ウェブトゥーンの人気で興行可能性の高いウェブトゥーンIPを基盤にしてオリジナルコンテンツを制作しており、それが原作ウェブトゥーンへの関心につながる好循環効果も現れている。

このようにグローバルOTTプラットフォームの韓国への投資拡大は、韓国の制作会社に安定的な制作環境やグローバル進出の機会を提供するというメリットがある。しかしながら、韓国の制作会社は完成作品の供給者としてIPが確保できず、追加収益の配分ももらえないなど、プラットフォームに従属され、収益創出の不均衡が発生し得る。したがって、長期的な観点からIP所有権の確保、または共同所有構造の形で韓国の制作会社が多様な収益創出構造を確保する方策も考えなければならない。例えばライセンス契約の形でOTTプラットフォームは一定期間の独占配信権のみを購入し、制作会社はIPを確保することで、制作会社とOTTプラットフォーム間のパートナーシップで安定的な流通やグローバル進出、IP収益構造の改善などに協力する方策づくりが必要である。

朴知惠(パク・ジヘ)研究員(jihye519@kiet.re.kr)
産業研究院人口減少・高齢化対応研究室

1) https://evoca.tv/cord-cutting-statistics/
2) (’16) 6.2% → (’17) 5.5% → (’18) 3.5% → (’19) 3.2% → (’20) 2.9% → (’21) 2.8% → (’22) 1.5% → (’23) 0.0%
3) 情報通信政策研究院(2024.12.30.)、‘2024年放送産業実態調査の結果、「KISDI STAT Report」vol.24-19、p.6.
4) https://www.wiseapp.co.kr/insight/detail/626
5) https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-10-17/squid-game-season-2-series-worth-900-million-to-netflix-so-far
6) https://about.netflix.com/ko/news/netflixkoreainvestment
7) https://www.chosun.com/opinion/2025/04/25/UFDXD6DIEZAARAIKA4KQM3ZUMM/
8) https://www.netflix.com/tudum/top10/tv-non-english
9) https://www.yna.co.kr/view/AKR20231215119700005?utm_source=chatgpt.com
10) https://www.etnews.com/20241121000277?utm_source=chatgpt.com

<本稿の内容は、筆者の個人的見解であり、必ずしもKOTRAの見解ではありません。>

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