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[自動車部品]韓国未来型自動車産業の動向及び展望
作成日
2016.10.25

電気自動運転車の時代が現実味を帯びてきている。化石燃料の枯渇可能性や地球温暖化などの環境問題、交通事故の増加による社会的費用や消費者の利便性向上ニーズに対応すべく、各国政府が燃費・環境・安全規制を強化しているためである。世界の電気自動車市場は2010年から本格的に形成され、今年は世界の需要が40万台を超える見通しである。韓国政府は2005年から「環境にやさしい自動車の開発及び普及のための基本計画」を策定し、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、バッテリー式電気自動車や水素燃料電池自動車の開発と普及に積極的に乗り出している。韓国市場では今年、30,000台のハイブリッドカーと2,500台の電気自動車が販売される見通しである。輸出はハイブリッドカーが2万台、電気自動車は5,000台に達すると予想される。韓国政府は、消費者がハイブリッドカーを購入する場合は100万ウォン、電気自動車の場合は1,500万ウォンを購入補助金として支給している。また、自動車取得税と諸税の減免も行っている。

現在までのところ、韓国のバッテリー式電気自動車の販売はあまり振るわないが、現代自動車は世界で初めて水素燃料電池自動車の量産技術を確保した。同社は、韓国をはじめ、欧米の先進国でも数百台の水素燃料電池自動車試験走行を行い、良い評価を得ている。同社のツーソンixは、米国の自動車メディアウォーズオート(Wards Auto)が発表した「2015年10ベストエンジン」に水素燃料電池自動車のエンジンとしては初めて選定され、技術力を認められている。同社はまた、韓米水素燃料電池自動車インフラのスムーズな整備に向けて米国エネルギー省と協力を強化することで合意し、性能向上と普及拡大に有利な位置を占めるようになった。

韓国政府は「第3次環境にやさしい自動車の開発及び普及のための基本計画」で2020年までに電気自動車分野で世界トップ3入りするという目標を設定した。韓国政府と自動車メーカーは、2010年から2015年にかけての第2次基本計画では電気自動車の開発と商用化に向けた基盤づくりを積極的に推進したが、第3次計画では挑戦的な目標を設定した。韓国政府と自動車メーカーは、2025年までに国内で170万台の電気自動車を生産し、国内向け販売と輸出を拡大する計画である。 韓国の自動車メーカーは、自動車のスマート化が進むにつれ、電子産業の比較優位をもとに車載電子部品の開発と商用化を着々と進めてきた。韓国政府は2003年からインテリジェント自動車(Intelligent Vehicle)を次世代成長エンジンに選定し、関連技術及び部品の開発と商用化を促進してきた。韓国政府は関連省庁間の協力によってスマートカーの開発を支援してきたが、ナビガントリサーチ(Navigant Research)など外国の専門調査会社が自動運転車の競争力を低く評価したため、その脆弱点を分析し、全省庁レベルで自動運転車の性能向上と商用化に力を入れている。


スマートカー及びエコカーの競争力比較(Ⅰ)

スマートカー及びエコカーの競争力比較(Ⅰ)
技術分野 2011年技術水準(%) 2013年技術水準(%) 最高水準の国
(100%)
韓国 日本 中国 韓国 日本 中国
スマートカー 86.0 99.5 69.4 83.8(-2.2) 97.6(-1.9) 67.1(-2.3) 欧州
エコカー 86.0 99.5 69.4 86.6(+0.6) 99.3(-0.2) 70.2(+0.8) 欧州
資料 : 韓国産業技術評価院(KIAT, 2015)

スマートカー及びエコカーの競争力比較(Ⅱ)

スマートカー及びエコカーの競争力比較(Ⅱ)
技術分野 主要品目 技術水準(%) 技術格差(%)
韓国 日本 中国 韓中 韓日 日中
スマートカー 融合基盤技術 82.6 97.7 66.1 16.6 -15.1 31.6
自動車安全技術 82.4 96.3 66.1 16.3 -13.9 30.2
自動車利便性向上技術 82.4 96.3 66.1 16.3 -13.9 30.2
エコカー 燃料電池自動車 88.8 98.7 70.7 18.0 -9.9 28.0
電気自動車 87.8 100.0 74.4 13.4 -12.2 25.6
ハイブリッドカー 86.1 100.0 72.7 13.4 -13.9 27.3
資料 : 韓国科学技術企画評価院(KISTEP)、2015

韓国の自動車業界だけではなく、情報通信技術業界もコネクテッドカーと自動運転車事業に進出すべく、研究開発投資を拡大している。サムスン電子はBMW社製自動車の仕様に自社タブレットPCを対応させ、フォルクスワーゲンの系列会社であるスペインのセアト(SEAT)社製自動車にはインフォテインメントシステムを搭載した。LG電子はメルセデス・ベンツと「ステレオカメラシステム」を共同開発しており、米国のフリースケール社とは自動運転車用先進運転支援システム(ADAS)中核部品の供給に合意した。一方、韓国政府は電気自動車と水素燃料電池自動車向け充電・水素スタンドの普及も積極的に推進しており、京畿道などに自動運転車試験走行用道路と関連下部構造を構築している。

企業間の競争状況

韓国市場では、現代自動車と起亜自動車がハイブリッドカーを量産・販売しており、現代・起亜自動車はハイブリッドカーの販売で世界3位となった。外国企業の中ではトヨタ、日産、フォード、ベンツとポルシェがハイブリッドカーを輸入・販売している。また、バッテリー式電気自動車は現代自動車と起亜自動車、韓国GM、ルノーサムスン自動車が販売しており、外国企業の中ではBMWと日産が電気自動車を輸入・販売している。

世界の自動車メーカーが電気自動運転車の開発と商用化に力を入れているものの、商用化は高級車メーカーがリードしている。特に、ドイツの高級ブランド車メーカーは、韓国のバッテリー企業との協力によって電気自動車を商用化しており、韓国の電子企業とはコネクテッドカーの開発を推進している。外国の自動車メーカーが韓国企業との協力を拡大している理由は、韓国のバッテリー企業が世界最高の競争力を保有しており、情報通信技術(ICT)分野での競争力も世界レベルに達しているためである。韓国の電気自動車に関する平均技術水準は世界1位である。1) 韓国政府も国内外企業間の共同研究開発を促進するため、様々な支援プログラムの策定に取り組んでいる。 電気自動運転車の時代に向かう中で自動車技術が複雑化していることを受け、自動車メーカーは関連産業企業との協力を拡大している。特に、自動運転車の商用化に向けてICT企業との技術提携及び資本提携を拡大しており、ICT企業の買収にも積極的に乗り出している。現代・起亜自動車も電気自動運転車の中核技術を自社開発しており、国内外ICT企業との協力を拡大している。

韓国の進出有望分野及び地域

韓国の中央政府と地方自治体は、外国自動車メーカーの対韓国投資を積極的に誘導している。韓国政府が電気自動車の国内生産基盤の拡充と普及拡大を積極的に推進しており、自動運転車の中長期開発計画の策定も進めているため、外国企業が進出するにはこれらの分野が有望である。韓国の自動車メーカーはハードウェア面、すなわち自動車の設計・組立及び部品の生産においては比較優位を確保しているものの、エンジニアリングとソフトウェアの開発、中核素材の開発においては先進国に遅れをとっているのが実情である。したがって、これらの分野における外国専門企業と韓国企業の戦略的提携や資本投資が期待されている。 韓国の自動車メーカーは、中央政府や地方自治体との協力によって電気自動車の開発と商用化を進めている。中央政府は中長期技術ロードマップを作成して中核技術の開発を支援しており、地方自治体は地域の比較優位をもとに部品革新クラスターを構築し、国内外部品企業の投資を誘致している。

地域別に見れば、起亜自動車は忠清南道と光州広域市にある工場で「レイ」と「ソウル」のバッテリー式電気自動車を生産しており、韓国GMは昌原工場でスパーク電気自動車を、ルノーサムスン自動車は釜山工場でSM3の電気自動車を生産している。蔚山広域市は、2012年から地域内の部品企業に対してRange Extended Electric Vehicle(REEV、範囲拡張電気自動車)向け部品の開発と生産を支援する一方、中小電気自動車メーカーが小型商用電気自動車を生産できるように支援してきた。京畿道と忠清南道にも中小電気自動車メーカーがあり、地方自治体との協力によって製品の開発と生産を進めている。済州島は電気自動車試験走行の基盤を拡充しており、2030年までに島内すべての自動車を電気自動車に切り替え、公害のない島として生まれ変わる計画である。

現代自動車が国内外で水素燃料電池自動車の試験走行を行っている中、忠清南道は水素燃料電池自動車の部品クラスター構築に向けて中央政府と協議中である。現代自動車は2020年から水素燃料電池自動車を量産する計画であり、これに対応すべく部品企業が関連技術開発を行っている。

大邱広域市はスマートカーの性能試験が行える小規模トラックをはじめ、支援下部構造が整っている。このように、韓国政府と自動車メーカー、関連産業の企業が、電気自動運転車の早期開発と商用化に向けて共に努力している。また、地方自治体は関連外国企業の投資誘致に積極的に乗り出している。したがって、外国企業は韓国における電気自動運転車のバリューチェーンとサプライチェーンを分析した上で、脆弱な部分や補完的な部分で協力会社を発掘し、関連クラスターへの投資を模索する必要がある。また、韓国政府と地方自治体が外国からの直接投資に対して様々なインセンティブを提供しているため、このようなインセンティブ制度も積極的に活用するといい。



By イ・ハング先任研究委員
産業研究院(KIET)


1) Roland Burger, e-Mobility Index Q3 2015, 2015. 9




< 本稿の内容は、筆者の個人的見解であり、 必ずしもKOTRAが所属する組織の見解ではありません。>

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