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[産業一般]2016年韓国の主力産業の展望
作成日
2016.10.25

最近の韓国主力産業の輸出不振には、景気的な要因だけではなく構造的な要因も作用しているため、2016年も輸出が大きく改善するのは困難とみられる。すなわち、景気停滞による世界市場の需要鈍化も原因の一つだが、グローバル供給能力の拡大、中国など新興国との競争激化、海外生産比率の拡大などが輸出拡大を制約している。また、長期化している円安と原油安、低価格製品の需要が高い新興市場の成長と競争拡大による輸出単価の下落なども、ある程度輸出にマイナスの影響を及ぼしている。

しかし、2016年における12大主力産業の輸出は、このような中国の低成長、グローバル競争の拡大による単価下落などの影響にもかかわらず、先進国の景気回復、新製品発売の拡大、オリンピック特需などに支えられて小幅な増加に転じる(2015年–9.4%→2016年0.4%)見通しである。

2016年の輸出は「上低下高」(上半期は低く下半期は高い)の流れで下半期に減少から抜け出し、分野別ではIT製造業と非IT製造業の輸出が好調な家電部門と素材産業の不振緩和に支えられ、小幅ながら共にプラス成長に転じると予想される。




業種別に細かく見ていくと、主力産業の成長を牽引していた半導体と造船部門の輸出はマイナス成長となる見通しである。半導体は海外生産量の拡大とDRAMの価格下落がマイナスの要因となり、造船は原油安が続くことによって海洋プラントの引き渡し延期が2016年の引き渡し分にも適用される予定のためである。

一方、家電の輸出は、海外生産の拡大と競争激化による輸出単価の下落というマイナス要因が常に存在するものの、リオオリンピック特需によるUHDTV(超高精細テレビ)と高級生活家電の需要増に支えられ、主力業種の中で最も高い6.3%の増加に転じる見通しである。当初の予想とは異なり、国際原油価格の下落が2015年下半期にも続いたことから、大きく不振だった精油と石油化学の輸出は、2015年より改善すると予想される。

輸出の規模が最も大きい自動車産業の輸出は、開発途上国の需要停滞の影響にもかかわらず、フォルクスワーゲン排ガス不正問題による反射的利益、新モデルの発売効果、さらには海外拠点向け部品需要の拡大に支えられて約2~3%の増加に転じると予想される。一般機械産業の輸出は、中国など新興市場の需要不振と輸出比率の高い建設重機の輸出不振が回復するかどうかによって変わることもあり得るが、環境にやさしい機械類の需要などに支えられ、これもまた増加に転じる見通しである。

2016年における素材産業群の輸出は、原油価格の下落により大きく減少した石油化学と精油の輸出改善に支えられ、全体的に落ち込みの幅が縮小して0.7%の減少率となる見通しである。精油産業の輸出は、中国など主要国の構造改革の影響と原油価格の下落が落ち着きを見せたことによる単価上昇の影響で約2.5%の増加に転じ、石油化学も中国の自給率上昇及び供給過剰の影響にもかかわらず、原油価格の安定に支えられて今年の輸出減少幅は大きく縮小すると予想される。

IT製造業群の輸出は、2015年は前年に比べて小幅に減少したと推定され、2016年には1%程度の増加に転じると予想される。半導体の輸出は海外生産の拡大とDRAMの価格下落の影響で、ディスプレイは最大の輸出市場である中国の低成長及び中国のパネル技術向上などにより、それぞれ減少するとみられる。一方、情報通信機器の輸出は、スマート機器の単価下落、技術障壁の低下、中国との競争激化など、輸出拡大にとってマイナスの要素は常にあるが、スマートフォン向け部品とSSDを中心に増加基調は維持されると予想される。

また、飲食料品の輸出は、中国の低成長とあわせ、輸出比率の高い日本への輸出で酒類を中心に減少が続き、全体としては1%の増加にとどまると予想される。




一方、2015年における12大主力産業の輸出が輸出全体に占める割合は約77.2%と推定され、2016年は76%に低下すると予想される。主力産業の輸出全体に占める割合は、2007年に82.5%のピークに達してからは低下の傾向にある。これは主に国内主力産業の海外生産拡大に起因しているが、主力産業の輸出市場が飽和状態に達し、市場競争が激化していることを示すものであるといえる。

その一方で、12大主力産業以外の一部後発業種は、輸出が最近まで着実に増加して新たな輸出有望業種に浮上している。重電機器、プラスチック製品、蓄電池、半導体・ディスプレイ装置、化粧品、医療用電子機器、医薬品である。これら7業種は、1990年代末から製造業の平均成長率を超える堅実な輸出拡大により成長。輸出全体に占める割合は2007年の3.9%から2014年には5.5%へと高くなり、2015年10月現在で6.2%とさらに上昇した。ただ、重電機器の輸出は2014年に比較的大幅な減少を示したが、2015年現在は減少幅が大きく縮小している。


主要業種の輸出増減率推移

(単位: %)

主要業種の輸出増減率推移
区分 2012 2013 2014 2015. 1~10
医薬品 14.0 3.8 15.2 32.3
重電機器 25.2 11.7 -29.2 -0.4
化粧品 19.0 24.3 51.6 58.2
半導体・ディスプレイ装置 -27.5 63.5 14.2 18.9
12大主力産業 -4.7 1.0 2.8 -6.7
輸出全体 -1.3 2.1 2.3 -7.6
注 : 12大主力産業の2015年(1~10月)数値は、2015年上半期ベース



2016年も主力産業の国内生産は輸出及び内需の鈍化、家電、情報通信機器、自動車など主要業種の海外生産拡大の影響で低成長が続くと予想される。まず、飲食料品の生産は、全般的な景気停滞基調にもかかわらず、インスタント食品市場の拡大、HMR(ホーム・ミール・リプレイスメント)など高付加価値製品の消費増加により2015年の水準が維持されると予想される。

機械産業群の生産については、まず自動車産業は2015年に過去最高の実績を記録した内需がベース効果で縮小し、2%の減少に転じる見通しである。一方、造船産業の生産は、すでに確保済みの超大型コンテナ船、LNG船、LPG船、ばら積み船といった高付加価値船種などの受注残が引き渡しスケジュールに従って建造される中、1~2%の増加基調が維持されると予想される。一般機械の生産も、わずかながら内需が増加するとともに輸出が回復して2015年より約2%増加する見通しである

素材産業群の中で繊維産業の生産は海外生産の拡大と輸出の低調な伸びにより約1%減少し、石油化学は基礎留分製品の国内生産継続と生産施設増設の影響にもかかわらず、エチレン-ナフサスプレッドの縮小などで約1%の減少が予想される。しかし、精油産業の生産は、原油安基調による石油製品の内需増加に支えられて3%の増加率となり、鉄鋼は在庫水準が高いものの内需回復の影響で1~2%増加するとみられる。

海外生産比率の高いIT製造業の生産は、ディスプレイが輸出不振により小幅に減少する見通しだが、それ以外の業種はすべて増加し、全体としては約3%の増加が見込まれる。半導体産業の生産は、高付加価値製品とアプリケーションプロセッサの量産拡大に支えられて約5%増加する見通しである。情報通信機器の生産は輸出と内需の拡大により、家電はオリンピック特需の恩恵を受けた映像機器と超節電型・ビルトイン家電を中心に、いずれも3~4%増加すると予想される。

主力産業の内需は、半導体と情報通信機器が需要産業の成長と新製品発売効果などに支えられてそれぞれ9%、3%程度増加するものの、自動車、造船、石油化学の不振によりその他業種が1%前後の増加率を示し、全体としては小幅な増加に留まると予想される。半導体の内需はSSDやモノのインターネット、ウェアラブルデバイスといった需要産業の成長に支えられて堅調に増加し続け、情報通信機器の内需はスマートフォン新製品の発売、Windows 10へのOS移行やPC買い替え需要がプラスの影響を及ぼすと期待される。内需比率が高い飲食料品産業の内需は、高級加工食品の輸入拡大、中東呼吸器症候群(MERS)の余波が収まることによる消費支出の上昇が予想されるものの、全般的に輸入が伸びず今年の水準を維持すると予想される。




2016年は、中国など新興市場の景気回復不振、継続的な円安、環境規制などにより外的条件は依然として不安定なものの、先進国の景気回復と国際原油価格の安定化に支えられて主力産業の輸出が小幅ながら増加するとみられる。

しかし、2016年には中国の成長率が2015年より減少する見通しで、中国の低成長が続く場合、韓国の主力産業は中国への輸出比率が高いため、輸出拡大にマイナスの影響を受けると予想される。このほかにも継続的な原油安、円安の長期化、新興国の景気不振可能性など、輸出環境は厳しいと予想される。

このような点で韓国の主力産業は東南アジアや中東、アフリカといった新しい輸出市場の開拓が不可欠であり、内外産業環境の変化に柔軟に対応するために価格・品質競争力を向上させ、輸出拡大の基盤を強化するなどの体質改善に努める必要がある。先導国との革新競争がますます激化し、中国などの後発組が猛追撃している中、韓国の主力産業はハードウェアとソフトウェア分野へのバランスの取れた投資による技術革新と製品の差別化が求められる。中長期的には、現在の主力製造分野にばかり投入するのではなく、次世代及び将来の成長エンジン分野における中核技術及びサービスの確保に向けて先回りの投資を行い、将来的な成長潜在力を強化して持続的成長の基盤を築くべきである。



By キム・ジョンギ研究委員
産業研究院主力産業研究室 / jkkim@kiet.re.kr



< 本稿の内容は、筆者の個人的見解であり、 必ずしもKOTRAが所属する組織の見解ではありません。>

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