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[医薬バイオ]韓国の医薬品企業によるグローバル市場進出拡大の見込み
作成日
2016.10.25

2016年、新薬開発とグローバル事業に対する投資を拡大

韓国の医薬品企業は、ハンミ薬品の大規模な技術輸出をきっかけに、2015年から医薬品業の本質を見つめ直すようになったと評価され、大手の医薬品企業らは新薬開発と未来成長ビジョンを再検討する動きを見せている。各々の医薬品企業が成功した新薬開発モデルを自社の状況に合わせて調整し、長期成長戦略を立てていると思われる。緑十字のようにグローバル市場に対する投資を拡大する企業も登場した。新興の医薬品市場を中心として輸出契約を増やす保寧製薬のような企業もある。過去とはパターンと雰囲気が明らかに異なる。韓国の医薬品企業が新薬開発と海外事業において各自成功の鍵を探しており、自信をもって積極的に投資する時代に変わりつつあるのだ。 大手の医薬品企業らは、新年のCEO新年あいさつと株主総会で、2016年にはR&D投資規模を拡大するという意志を強く表した。従って、医薬品企業の経営における優先順位が、営業実績からR&Dに変わったと考えられる。

韓国の医薬品企業によるグローバル新薬開発

1987年に物質特許が導入されて1990年から始まった韓国の新薬開発の歴史が約25年以上経とうとする今、韓国でのみ通用していた韓国型新薬を超えてグローバル新薬が発売された。今後もこうした流れに拍車がかかり、新薬開発が続く見込みだ。今まではほとんど海外の医薬品企業に技術を輸出する形だったので、新薬の売り上げによる収益も分け合うことが一般的だった。これからはだんだん韓国の医薬品企業が独自的に資金を投入して第Ⅲ相まで開発することもあるだろう。韓国の医薬品企業の新薬開発力は、時間の経過とともに強くなると思われる。

韓国の新薬開発の歴史は、1991年にSKケミカルの白金錯体抗がん剤(サンプラ)が韓国の新薬第1号として許可を取得したことで始まった。2003年には、LG生命科学が開発したキノロン系抗生剤ファクティブが試行錯誤の末にアメリカFDA承認を得てグローバル新薬として発売されたが、商業的には成果をあげられなかった。2014年に東亜STが技術輸出したスーパー抗生剤シベックストロがアメリカFDAからグローバル新薬の承認を受けた。こちらは商業的に成功する可能性が高い状況だ。最近ではグローバル第Ⅰ相~第Ⅲ相臨床試験が行われている韓国型新薬Pipe lineが増加している。

新薬開発によって、2020年代にはハンミ薬品などをはじめとする韓国の大手医薬品企業を中心にグローバル医薬品企業へ成長するシナリオも描けるようになった。

韓国の医薬品企業のR&D費用増加による収益構造の変化

2015年から大手の医薬品企業を中心にR&D費用を増やしていることから、営業利益は著しく伸び悩んだり減少してしまっている。2016年から、大手医薬品企業はまずR&Dインフラ強化に徹底的に取り組む予定だ。国内外での戦略的な提携に向けたバイオベンチャーへの持分投資もR&Dの一環で行われ、早期に新薬Pipe lineを確保するための支出も大幅に増えるだろう。現在進められているグローバル臨床にも、従来よりも思い切って取り組む可能性が高い。営業利益とR&D費用のうちR&Dの重要性がより強まり、短期的利益を犠牲にしてR&Dを強化できると判断されれば、大胆に意思決定を行うだろう。従って、今後1~2年間は大手医薬品企業の営業利益が停滞したり減少する可能性もある。

各医薬品企業のグローバル新薬開発の成果

ハンミ薬品は巨額のR&D費用を投資して2015年に6件の大規模新薬Pipe line技術輸出を成功させた。2015年にハンミ薬品が行った技術輸出の規模は、6件合わせて契約金6億560万ドル、マイルストーン64億2千6百万ドル、そして2桁のランニング・ロイヤリティーである。

グローバル新薬は東亜STがTrius Therapeutics社(現Cubist社)に技術を輸出する形でシベックストロをグローバル市場に発売した。商業的に成功を収められる可能性がある最初のグローバル新薬と言える。

糖尿病性神経障害(DA9801)の治療薬もアメリカFDAより第Ⅲ相試験許可を得られれば、商業的な価値が高くなる。緑十字の免疫グロブリンIVIG-snもFDA新薬承認を申請中だ。ハンター症候群の治療薬も2013年にアメリカFDAより稀少難病治療薬として認められ、第Ⅰ相試験を行う予定だ。SKケミカルもオーストラリアのCSL社に技術輸出を行い、血友病治療薬NBP601がアメリカFDAに新薬承認を申請中だ。グローバル新薬として商業的な成功可能性も高そうだ。SK(株)の新薬開発子会社SKバイオファームが独自開発中のてんかん治療薬(YKP3089)は、てんかん新薬では世界初でアメリカFDAより第Ⅱ相試験を終えた。SKバイオファームは、他にもナルコレプシー治療薬や急性反復性発作治療薬をグローバル新薬として開発中だ。JW中外製薬のWnt抗がん剤(急性骨髄性白血病治療剤)はアメリカの第Ⅰ相臨床試験完了段階にある。また、バイロメドは、遺伝子治療薬VM202が重症下肢虚血治療薬と糖尿病性神経障害治療薬として第Ⅲ相臨床試験を行っている。ユハンは、退行性ヘルニア疾患治療薬(YH14618)の第Ⅱ相試験を行っている。

新薬開発に向けた活発なオープンイノベーション

新薬開発については、独自的に物質探索から始めることもあるだろうが、他企業を活用する取り組みも続いていくだろう。ハンミ薬品は大規模の技術輸出を行ってからオープンイノベーションの重要性を強調している。実際にハンミ薬品は国内外の産学研バイオベンチャー企業とコミュニケーションしながら持続的かつ様々な連携モデルを構築し、次世代のグローバル新薬や革新技術の開発を通して新しい成長エンジンを確保しようとしている。オープンイノベーションは新薬開発期間を短縮させ、費用も節約させられるだろう。ハンミ薬品は2015年1月にAllegroへ2千万ドルを投資して持分を確保し、ルミネートを共同開発している。また、同年8月にはバイオベンチャー企業Repugenと人工抗体プラットフォーム技術のRepebodyを開発し、有望な新薬候補物質を開発している。ハンミ薬品は今後もバイオベンチャーに対する持分投資を続けるとみられる。ユハンは2016年3月に1千万ドル(約120億ウォン)を投資し、アメリカの抗体新薬開発を専門とする「ソレント」社と合弁会社(JVC)ImmuneOncia Therapeuticsを設立した。ユハンはバイオニア、テラゼンイーテックス、エンソル・バイオサイエンスなどに対する持分投資を拡大してきた。現在は5,571億ウォンの現金を保有しており、R&D投資の拡大とともに新薬Pipe lineの拡大や販売権利を拡大するためにバイオベンチャーへの投資を続けていくと思われる。緑十字ホールディングスも2015年5月にアメリカのバイオベンチャー企業ユウェンタース・セラピューティクス社に対して、ポスコ系の投資機関ポスコ技術投資と共同で750万ドルを投資した。ユウェンタースでは体内の幹細胞誘導遺伝子を利用した心血管疾患遺伝子治療薬(JVS-100)が現在第Ⅱ相臨床試験中である。日東製薬はセリバリーとパーキンソン病治療薬IOP-parkinの共同開発契約を結んだ。両社がセリバリーの中核技術である「細胞内での巨大分子の運搬技術」を組み合わせた新薬候補物質「iCP-Parkin」の開発を共同で行うという内容である。「iCP-Parkin」はドーパミンをつくる脳神経細胞の損傷を防ぎ、パーキンソン病が発病すると現れる致命的な症状を治療するものである。

医薬品産業の育成に対する政府の意志は固い

保健福祉部は、2016年に大統領業務報告の際に、バイオヘルス産業を韓国経済の新しい成長エンジンとして発展させて、2016年に雇用76万人、付加価値65兆ウォンに成長させ、12年に世界13位だったバイオヘルスの規模を17年までに7位に引き上げる計画を発表した。バイオ製薬を育成して第2、第3のハンミ薬品をつくるために、1,500億ウォンのグローバル・ヘルスケア・ファンドに本格的に投資し、グローバル進出した新薬に対する薬価優遇、幹細胞バンクなどの精密・再生医療の戦略的な育成、医療機器のR&Dに1,155億ウォンを支援すると約束した。目標達成の可否はさておき、これは製薬バイオ産業の成長可能性と重要性を政府が認識しているという意味であり、政府の支援も続くだろう。




韓国のグローバル医薬品企業誕生シナリオ

韓国の医薬品企業が新薬開発への投資を始めて25年以上が経ち、2015年からは技術輸出によってグローバル市場の仲間入りをしたと言えるだろう。そしてグローバル臨床試験が行われている韓国の医薬品企業のPipe lineも、もう一度注目を集められるはずだ。こうした時期に、韓国の医薬品企業がグローバル市場で活躍できるシナリオを時期ごとに分けて考えてみた。これはもちろん実現可能性のあるいくつかのシナリオの中からベストなものである。

2020年まではハンミ薬品、緑十字がグローバル医薬品企業へ発展する初期段階になる可能性が高い。他の大手医薬品企業もこの期間に海外進出に注力するとみられ、グローバル化に一歩近づく可能性が高い。2020年~2025年には単独でアメリカFDA臨床試験を行いグローバル新薬として承認を得る、本当の意味での韓国の新薬が生まれる確率が高い。この場合、流通チャネルを持たないため、グローバル医薬品企業との販売契約によって流通する構造になるだろう。2025~2030年には、韓国で開発したグローバル新薬が韓国の医薬品企業の流通網で販売されるシナリオが考えられる。蓄積された資金とグローバル・マーケティング・ノウハウで、グローバル流通チャネルも構築できる時期だろう。この時期になれば、名実ともにグローバル韓国医薬品企業が生まれる可能性もある。



By ハ・テギ研究員
sk証券 / tgha@sk.com



< 本稿の内容は、筆者の個人的見解であり、 必ずしもKOTRAが所属する組織の見解ではありません。>

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