産業フォーカス
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序論
最近、ファッション市場における消費者の要求がさらに複雑化・多様化している。所得増大により高級品に消費が集中したり、景気低迷によって合理的な消費を求めるようになってきた。特に、個性を重視する消費の増加、レジャー・文化など人生を豊かにする消費の拡大、ネットショッピングの増加、高齢化と主要消費者の変化などは消費多様化の一因と言える。
消費の二極化の影響により、バーバリー(BURBERRY)、ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)といった高級ブランドから、抜群のデザインと企画・流通を手がけるザラ(ZARA)、H&M、ユニクロといった中低価格のファストファッションブランドまで、様々なファッションブランドがグローバル市場を拡大させている。
グローバルブランドが国内外の市場で角逐している中、中国と東南アジアに対する海外投資が拡大するにつれ、生産能力や技術力の向上による競争がより激化している。ファッション商品は季節と流行に大きく影響される上、商品の寿命が短いため持続的な需要が発生するのだが、これは消費者層とスタイルが多様化・多角化するファッション産業において追い風となる。早いスピードで変化する消費者の要求に応えるため、新商品開発も急ピッチで進んでいる。
産業の現状
世界のファッション市場は2013年ベースで1兆5400億ドル規模と2009年以降から年平均4.2%の成長を遂げ、2020年までは毎年4%の成長を続ける見通しだ。
衣類別で見ると女性服が6381億ドルと最も高く、全体の41.5%を占めていた。次いで男性服が27.6%、子供服が14%と続いた。新技術を取り入れた商品も急成長を続けIT技術を融合したスマートウェアのみならず、生産過程や流通段階におけるスマート化もスピードアップしている。
地域別で見ると、アメリカ大陸が5606億ドルと全体の36.3%を占め、欧州が5076億ドルで33%、アジア・太平洋地域が4178億ドルと27.2%を占めている。
国別では米国が4457億ドル(29.0%)、中国1941億ドル(12.6%)、日本1160億ドル(7.6%)、ロシア827億ドル(5.4%)、韓国318億ドル(2.1%)の順で市場を形成していた。
地域別ファッション市場の現況(2013年)
資料:産業通商資源部「2014韓国ファッション市場調査報告書」孫引き(出展:Market Line)
韓国のファッション市場は内需不振など不確実性の高まりにもかかわらず、小幅ながら成長を続けている。オンラインとモバイルショッピング、ショッピングモールの成長といった流通チャネルの多角化、消費者の多様化などはその成長を牽引している。ファッション市場の主導権がスポーツウェアからカジュアルへと移りつつある中、カジュアル、男性服、女性服、下着などは依然として好調を見せている。
2016年と2017年のファッション市場規模推移
区分 | 22016年実績(推定) | 前年比 | 2017年の見通し | 前年比 |
---|---|---|---|---|
カジュアル | 13兆8100億ウォン (112億6千万ドル) |
5.4% | 14兆7千億ウォン (130億5千万ドル) |
6.4% |
スポーツウェア | 7兆3200億ウォン (64億8千万ドル) |
-7.9% | 7兆1500億ウォン (63億5千万ドル) |
-2.3% |
靴 | 6兆4700億ウォン (57億4千万ドル) |
-5.9% | 6兆3800億ウォン (56億7千万ドル) |
-1.5% |
男性服 | 4兆8200億ウォン (42億8千万ドル) |
11.8% | 5兆1200億ウォン (45億5千万ドル) |
6.3% |
女性服 | 3兆7700億ウォン (33億5千万ドル) |
2.8% | 4兆400億ウォン (35億9千万ドル) |
7.1% |
カバン | 2兆6千億ウォン (23億1千万ドル) |
3.6% | 2兆6500億ウォン (23億5千万ドル) |
1.9% |
下着 | 2兆1400億ウォン (19億ドル) |
13.6% | 2兆3700億ウォン (21億ドル) |
10.4% |
子供服 | 1兆2700億ウォン (11億3千万ドル) |
8.9% | 1兆2800億ウォン (11億4千万ドル) |
0.8% |
総計 | 42兆2100億ウォン (374億8千万ドル) |
1.8% | 43兆6800億ウォン (387億9千万ドル) |
3.5% |
2010年から2014年まで内需と輸出の持続的成長に支えられ韓国ファッション産業の生産規模は拡大したが、短期的に見れば国内の生産状況悪化により2012年以降の生産規模は減少に転じている。
こうした減少の原因は、国内のファッショントレンドが絶えず変化しファストファッションブランドの堅実な成長と韓流コンテンツの輸出拡大が国内の生産にプラス要因として働いているものの、国内市場で増加した需要分を外国産輸入品がまかなう割合が高まっているためだ。
2014年のファッション業界の生産推移をみると、シャツとスポーツウェアが28%と最も高かった。これは、レジャーやヘルスなど生活の質を重視する消費者が多く登場し始めたのとライフスタイルの変化によるものである。スポーツウェアとアウトドアファッションなど衣服の境界も曖昧になっている。
韓流ブームによる韓国ブランドへの選好度と知名度の上昇、製品の競争力強化などに支えられファッション産業の輸出は2010年から4.4%の高い成長を示す一方、繊維と生地は減少傾向を示している。
ファッション産業の輸出拡大をリードしたのは、ベトナム(24.2%)、台湾(16.0%)、インドネシア(10.8%)、ミャンマー(9.34%)、中国(3.2%)など、韓流ブームが盛り上がっている国への輸出だった。
特に、2010年に最も高かった日本への輸出は2010年から2016年までは1.5%の上昇にとどまったが、同期のベトナムへの輸出は20%以上急増した。
外国人直接投資(FDI)の現況
韓国のファッション産業に対するFDIは2013年からペースダウンしているが、安定基調を示している。特に、グローバルファッション企業のアジア市場進出の拠点として従来は日本や香港が好まれたが、最近では中国と韓国の消費者をターゲットに韓国市場への進出を図っている。
しかし、ZARAやユニクロといったグローバルなファストファッションブランドとの合弁投資が中心のFDIは、衣類製造より企業の流通に集中される傾向にある。 BURBERRYやGUCCIのような高級ブランドが韓国ファッション業界の持続的な成長と外国人観光客誘致のために韓国市場へ直接進出したケースもある。
立地競争力
韓国ファッション産業の最大集積地は、流行と流通をリードしながら最も大きな消費市場をもつソウル、仁川、京畿といった首都圏だが、ニット(編み物)産業は京畿北部と全羅北道に集中している。
京畿北部は世界の高級ニットウェア(ゴルフ・スポーツ・レジャーウェア等)市場の約40%を占める世界最高のニット生産地だ。国内のニット生産の約90%が同地域に密集し、国内生地の60%を消費する韓国最大の生地消費地域でもある。
全羅北道には紡績産業から縫製、衣類製造に至る多様な企業が位置しており、綿糸、手編糸、縫製など天然繊維を中心とする生産構造である。品目別でみると下着、子供服を中心とするニットウェアが主となっている。
釜山市にはPARKLAND、INDIAN、KOLPING、GREENJOYなど大手アパレルメーカーが自動化設備のある縫製工場を稼動し、半径50km以内にOEM(original equipment manufacturer)企業が分布している。地域の特性である海洋と港湾、国際空港とのアクセスのよさを活かしグローバルトレンドをいち早く導入することで物流の競争力を高め、世界中の需要にスピーディーに対応できるといったメリットがある。技術の高い専門人材と各大学で毎年排出される優秀な人材も同地域の強みと言える。
今後の展望
世界のファッション市場は2013年実績で約1兆3300億ドル規模であり、2020年までの年平均成長率は約4%にも達すると期待されている。市場における国境が薄くなっており、O2O(online-to-offline、オンラインとオフラインの連携)ビジネス戦略が台頭し、ファッション産業では生産から流通までのサプライチェーンのグローバル化及び中央集中化が加速する見通しだ。
韓国のファッション産業もやはり持続的な成長をみせると予想されている。韓国は世界レベルの化学繊維素材企業とインフラを持ち、IT・NTなど融合技術を活用できる高い潜在力を持っている。
ファッション衣類が少量生産の構造へと転換し、環境への配慮、高機能性、デザイン志向、スマート衣類の成長と共にファッション市場の多様化・細分化・融合化が複合的に進むだろう。需要の面からみると、高機能性やエコ繊維への需要拡大、衣類消費の多角化が、今後のファッション市場の成長の原動力になると期待されている。
By イ・イムジャ
産業研究院 研究委員 / ijrhee@kiet.re.kr
< 本稿の内容は、筆者の個人的見解であり、 必ずしもKOTRAが所属する組織の見解ではありません。 >