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低コストと高効率を武器に成長軌道に乗った韓国のESS産業
序論
「ESS(energy storage system、エネルギー貯蔵システム)」とは、すでに生産した電力を後から利用可能な形で格納する装置で、鉛蓄電池やリチウムイン電池といったバッテリーとEMS(energy management system)、PCS(power conversion system)の制御システムから構成されている。世界に設置されているESS規模は2014年700MWhから2016年1629MWhにまで拡大した。現在、導入が進んでいるリチウムイオン電池など、ESSのバッテリーはエネルギーの変換が効率的で、かつ環境にやさしいことから成長可能性が非常に大きいと言える。専門家らは2016年1.8GWhだった世界のリチウムイオン電池市場が2020年には8.5GWhへと、さらに2024年には16.2GWhにまで成長すると見通している。2016年25億6千万ドルだった世界のESS市場は、2020年に150億ドル、2025年には292億ドルまで成長すると期待されている。
世界第2位の韓国のESS普及率
2016年ベースで、韓国に設置されているESSは昨年比52.4MWh増の291.4MWh。これは世界のESS市場の18%に相当し、米市場の50%を上回る水準だ。韓国の国土面積が米国の1%に過ぎないことを考えれば、韓国にESSが広く普及していることが見て取れる。日本、ドイツ、イタリアといった先進国も韓国より低い水準で、さらにリチウムイオン電池の生産においても韓国の生産量は急速に増え、世界トップレベルを堅持している。特に、韓国の「LG化学」では591MWh、「サムスンSDI」では544MWhのESS製品を生産しており、いずれも中国の比亜迪(188MWh)や米国のテスラ(186MWh)といった世界有数のグローバル企業よりも大きな生産規模を誇る。韓国のESS市場は2016年2億6310万ドル規模へと成長。輸出も急増し、昨年は4億ドルの輸出を達成した。
世界のESS普及率の推移
ランキング | 国 | 設置台数 | 規模 (MWh、市場シェア) |
---|---|---|---|
1 |
米国 |
292 |
570.6 (35%) |
2 |
韓国 |
55 |
291.4 (17.9%) |
3 |
日本 |
47 |
254.6 (15.6%) |
4 |
ドイツ |
38 |
122.2 (7.5%) |
5 |
イタリア |
31 |
56.2 (3.4%) |
合計 |
1,629.1 (100%) |
世界市場シェアに比べ低い競争力水準
韓国のESS産業は世界市場で高いシェアを占めているが、競争力の部分では他のグローバル企業より比較的低いと指摘されている。中核技術分野における韓国の競争力は世界最高レベルの約82~83%水準であり、部品・素材分野では約80%の水準となっている。しかし、製造技術においてはそれより高い88%の水準で、価格競争力の面においても他国を大きく引き離している。韓国企業のESS製品の価格は他のグローバル企業より21~27%ほど低く設定されている。
ESS規模別の競争力の比較(2017)
区分 | 主要企業 | 競争力 (世界最高=100) |
価格 (ドル/MWh) |
|||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
グローバル | 韓国 | 中核技術 | 部品・素材 | 製造技術 | グローバル | 韓国 | 格差 | |
小規模 |
SMA(ドイツ)、NEC、京セラ、パナソニック |
サムスンSDI、LG化学、LS電線 |
83 |
80 |
88 |
1,120 |
882 |
21% |
エネルギー |
ABB (スイス)、Younicos、SMA (ドイツ)、Parker、GE、AES (米国) |
Hyosung、LS電線、LG CNS、宇進産電、デスティンパワー、LG化学、サムスンSDI |
82 |
79 |
88 |
950 |
700 |
27% |
世界市場に進出している主な韓国企業
現在、韓国の主要ESS企業は世界市場で大活躍している。「LG化学」と「サムスンSDI」がリーディングカンパニーであり、太陽光とEMSを組み合わせて新ビジネスモデルを開発した「ハンファQセルズ」と「LS電線」はビジネス成功のため、韓国電力公社と協力を進めている。
ESSの設置に不可欠は「PCS(Power Conversion System、電力変換装置)」は、ESS内の発電源から電力を受信し、バッテリーに貯蔵するため電気エネルギーを変形したり、それを他のシステムに放出する装置だ。専門家らはPCSがESSの価値の25%を占めると主張する。「Destin Power」は同分野で最も競争力の高い韓国企業で、「Kokam」は米経済誌ブルームバーグと市場調査機関「ナビカントリサーチ」から最優秀企業として選定された。
韓国の主なESS企業の世界進出の現状
企業名 | 事業・戦略 |
---|---|
LG化学 |
-世界トップのESS企業「AES」に1GWh(世界最大規模)の製品を供給 |
サムスンSDI |
- 韓国電力公社と協力し北米や南アジアにMV ESS、周波数調整用ESS、再生可能エネルギーに関する事業を展開 |
SKイノベーション |
-電気自動車(EV)の二次電池部門の人材拡充 |
ハンファQセルズ |
-太陽光システムを導入したビジネスモデルを開発 |
LS電線 |
-太陽光システムやEMSを導入したビジネスモデルを開発 |
LG CNS |
-グアム電力公社(GPA)と40MWhのESS供給契約 |
斗山重工業 |
-2016年7月、米国の「1Energy Systems」とESS力量強化に向けたM&A |
Bosungパワーテック |
-韓国電力公社の本社に1MWhのESSが含まれた「スマートグリッドステーション」を構築 |
デスティンパワー |
-韓国最大のESS PCSの供給メーカー |
Kokam |
-2017年ブルームバーグの世界ESS企業で第3位、2016年ナビカントリサーチの世界ESS企業の競争力で第4位 |
韓国電力公社 |
-2014年に初のESS(8MWh規模)を設置 |
蔚山広域市 |
-2017年7月、産業敷地に7MWh規模のESSを設置予定 |
2千億ウォン規模の新市場への期待感
産業通商資源部は韓国のESS産業の活性化のために、公共機関にESS設置を義務付けたり特別割引法案を改正するなど、様々な支援策を導入している。公共の建物である場合、1MWh以上の電気供給契約に対し、最低でも5%は義務的にESSを設置し、利用するようにしている。専門家らはESSが従来の建物にすべて適用される場合、2020年まで2千億ウォン(17億620万ドル)規模の、244MWhに相当する電力市場が追加的に形成されると見通している。
By グァク・デジョン
産業研究院 研究委員 / djgwak@kiet.re.kr
< 本稿の内容は、筆者の個人的見解であり、 必ずしもKOTRAが所属する組織の見解ではありません。 >