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[農畜産]韓国ペット市場の最新動向
作成日
2017.10.26


はじめに


少子高齢化の影響により、韓国でペットを飼う家庭が増えている。韓国のペット市場は2014年1兆4300億ウォンから2020年には6兆ウォンにまで迫る見通しであり、関連産業も急成長を遂げると見られる。

また、単にペットや飼料の販売、医療といった分野に限られていた関連産業が最近では美容、保険といった他産業と組み合わされ多角化が進んでいる。各産業のシナジー効果の高まりにより、経済におけるペット産業の存在感も強まると予想される。

ところが、韓国のペット関連法律である「動物保護法」では動物の「保護」に焦点が置かれているため、ペット関連産業の育成・発展には不十分であるのが現状だ。要するに、ペット関連産業の規模や重要性の大きさに比べ、韓国の支援政策や制度は満足できる水準に達していないということだ。したがって、体系的かつ実質的な政策・立法支援を通じたペット産業の育成が求められていると言える。


韓国のペット産業の概要


1) 飼育の現状

一人暮らしの増加により、ペットへの需要も伸びている。動物保護に関する国民意識調査によると、2015年のペット飼育世帯率は全世帯の21.8%を占め、2012年比3.9%増となった。韓国の飼育世帯数は457万世帯と推計され、うち犬は一世帯当たり1.28頭、猫は1.74頭である。つまり、韓国で犬は512万頭、猫は189万頭飼育されているということだが、これは2012年比それぞれ16.6%と63.7%増加したものである。

2) 市場の現状

ペット関連市場の規模は2012年実績で約8947億5千万ウォン(約7億9千万ドル)と推計されている。ペットへの需要増加で関連市場の活性化が進み、世帯の年平均支出も膨れ上がった。特に、2010年のグローバル景気低迷にも関わらず、ペット関連用品の支出は急増した。この現象は、景気動向にあまり左右されないペット産業の特徴と言える。

ペット産業は毎年、二桁の成長を続けており、新市場と雇用の創出に貢献する見込みだ。ペット市場は着実に成長し、2020年頃には6兆ウォンまで伸張する見通しだ。


ペット関連の伝統的産業


ペット産業の分野ごとに動向をみると、2012年のペット飼料市場は約1500億ウォン規模、小売ベースでは2500億ウォン(40%のマージン率を適用)に上ると推計される。消費の高級化により売上高が急激にアップし、ペットやペット用品の小売市場は2009年1687億ウォンから2011年2674億ウォンへと、2年間1.7倍成長した。また、用品の売場で医療や美容サービスも一緒に提供されるなど、関連用品の流通業とサービス業が複合化する傾向を示している。

1) フード

一般の産業家畜用飼料と異なり、ペット用食品は老化と健康管理にこだわった製品が重要となっている。特に、ペットの健康に対する意識が高まり、予防接種や治療、診断に関する市場が成長し活性化する見通しだ。

2) 獣医による診察

2014年12月の時点で韓国には約4千の動物診療所があり、2008年比40.5%増加した。うち2792ヵ所はペット向け、771ヵ所は産業動物向け、416ヵ所はどちらもで、計5745人の獣医師が勤務している。最近の動物診療所は診察のみならず、ペットショップ、ペットサロン(トリミング)、ペットカフェなどの機能も果たしている。

3) 医療機器

韓国の動物用医療機器メーカーの大半は零細企業で、多品種少量生産を行っている。しかし、ペットの飼育頭数が増加し、ペット医療への関心が高まるにつれ、専門化・高級化したペット用医療機器市場が次第に活気付いている。近年は人のために設計された高額の先端装備など多様な種類の医療機器が動物診療に用いられ、2002年まで韓国に登録された動物用医療機器品目は韓国企業15社の11件に留まっていたが、2007年から登録企業が増え2008年には40件を上回った。さらに、2011年には毎年60件以上の品目が登録され、特に輸入業より製造業への許可が増え始めた。2013年3月31日ベースで製造会社98社と輸入会社74社が計703品目を動物用医療機器として登録し、現在は18社の41品目の登録期限が切れ、154社662品目が登録されている状況だ。

4) 医薬品

韓国の動物医薬品市場でも国内製産品と輸入完成品の需要が着実に伸び、輸出においても原材料と完成品のいずれも年々持続的に成長している。


ペット関連の新産業


1) 保険

韓国のペット保険市場はまだ開拓されておらず、小規模市場となっている。2008年にいくつかの企業がビジネスを始めたが、動物医療費の基準策定が難しく、収益性も低いことから2010年に事業を諦めた。その後、2013年1月よりペット登録制度の施行が確定すると、一部の企業から新しいペット保険商品が発売された。しかし、まだ選択肢が少ないため、飼い主は依然として高額の医療費を強いられている。

ペット医療費の増大を受け、ペット保険市場も浮上する見通しだ。ペット販売士向けの先天性・遺伝性疾病や癌、障害などに関する保険商品が開発され、その他定期検診、死亡保険金、妊娠合併症、治療費の補償といった特約も追加される可能性がある。さらに、ペットへの需要の高まりにより動物による第3者への賠償責任(民法第759条第2項)の事例が増えているのも、ペット保険産業の成長に追い風となるだろう。

イギリスでは動物保険加入率が20%であるのに対し、韓国は0.1%未満であり、その保険商品を販売している会社も2社に留まっている。動物には国民健康保険のような制度がないため、人より医療費負担が高く、市場の成長可能性が高いと言える。イギリスや日本ではペット保険業の成長率が毎年17%以上を示しており、ペット関連産業の中では最も潜在力の大きい市場となっている。

2) レクリエーション

ペット訓練学校、モデルエージェンシー、サロンといったペット関連サービス市場が細分化・専門化する見通しだ。現在、衛生や清潔を目的に行われている動物の美容は今後、審美的な目的が中心となるだろう。さらに、ペットホテル、ペット同伴旅行商品など、様々なスタイルの業界が出現すると見られる。


ペット産業の輸出拡大対策と政策


1) 制度改善

過去30年間、韓国のペット飼料・用品市場は内外共に著しい成長を遂げた。しかし、企業の努力だけでは限界があり、世界的に存在感を発揮するには国を挙げた支援が欠かせない。巨大な中国市場は、ペット産業にとってブルーオーシャンだ。中国のペット飼育頭数は韓国の2~30倍に達するにも関わらず、中国産のペット用品や飼料は自国民からもあまり信頼されていない。韓国企業はそうした現状を踏まえ、韓流ブームを追い風に中国のペット市場に進出する契機をつかめると考えられる。

ところが、輸出の際、通関など現実問題もネックとなる。その例として、韓国企業がペット用飼料を中国に輸出するには2年半かかる通関手続きを踏まなければならず、さらに買い手でも変更されると、また2年半をかけて同じ手続きを繰り返さなければならない。もちろん、正確な手続きを進め予防措置を取っておくと、輸入規制を受ける可能性はそう高くないが、実際の運営に問題が生じてしまう。そうした問題が政府間協議で改善されれば、韓国ペット産業の海外進出のチャンスは一気に増えよう。

アメリカの場合、ペット用品は韓米FTAで非関税分野に属するため輸出の際、原産地証明書類さえ整えば非関税で輸出することができる。これは韓国のペット用品会社には良い機会となる。

2) 各分野に求められる対策の立案

メリカ市場のペット用品の7~80%が中国やアメリカ、メキシコ製品であることも大きな特徴だ。中でも高価で高い技術力の求められる製品はアメリカ、カナダ、ドイツなどで生産されるのに対し、安価なアクセサリーや服などは中国やメキシコ製が多い。韓国の場合、一部ペット用品デザインブランドがアメリカに進出しているものの、まだ存在感は弱い方だ。

そこで、安価な中国製品と競争するより、エコ・オーガニックを売りにした飼料や健康グッズを中心にプレミアム市場にチャレンジした方が良いだろう。斬新なアイデア、Wi-Fiといった新技術を積極的に取り入れて差別化を図った製品を開発することも一つの案となる。

商品の応用・改善・融合などを通してペット産業への転換がし易くなっただけに、今は他の業界で熾烈な競争を強いられている韓国の中小企業もオリジナル技術やユニークなアイデアを活かし、まさに超巨大ペット市場を形成しているアメリカへの進出を図ってみてもよさそうだ。

3) 博覧会への参加-企業の積極的な参加の拡大

「愛犬新聞」は2014年11月、中国北京で開かれた「中国国際ペット洋品店(China International Pet Show;CIPS)」にブースを出展し、韓国起業家の話し合いの場を設け、上海で開かれる「Pet Fair Asia」の主催側とエージェンシーの契約をし、2015年から同展示会で韓国のペット関連会社の海外輸出をサポートするための韓国館を運営している。

韓国企業は輸出販路の拡大のため、アメリカのペット展示会にも進んで参加している。米国ペット商品協会(American Pet Products Association;APPA)の主管のもと、毎年春に開催されている世界最大級「Global Pet Expo」や「Super Pet Expo」にも注目が必要だ。


国際ペット博覧会

国際ペット博覧会
博覧会名 開催地 参加する産業・企業
(商品種類)
規模 開催回数
Interzoo 欧州・CIS - 用品:フード、おもちゃ、グルーミング用品、健康グッズ、ケージ、葬儀用品、アクセサリー
- 設置品・設備:ショーケース、ストアの設備類
- 食品技術:原材料、製造技術、包装・保存技術、製造機械、包装機械
- 健康管理・治療法

世界最大級
2014年度1,698社参加(うち海外企業1,390社)
ビジネス関係者のみ

入場可

1回/2年
China International Pet Show 中国 フード、服、おもちゃ、ケージ、訓練用具、健康管理、美容、医療機器・医薬品、葬儀用品 2015年度1,157社 毎年
Pet Fair Asia 中国 フード、用品、水族館、小動物 2015年度700社 毎年
Daegu Pet Show 韓国 - 用品・アクセサリー:フード、医薬品、健康管理用品、美容用品、衛生用品、ファッション用品
- 設置品・設備:ショーケース、ストアの設備類、医療機器、車両用品、外出用品、おもちゃ、訓練施設
- サービス:獣医師診療、美容室、テーマパーク、ショッピングモール、教育機関、学校、応用プログラム、保険、葬儀サービス、フランチャイズ
- 伴侶動物館
90社 毎年
Thailand International Dog Show タイ フード・オムツ、シャンプー・ローション、美容道具、リード、おもちゃ、健康管理用品(医薬品)、純血飼育場、関連サービス(ホテル・訓練)、服・記念品 200社 毎年
Pet South America 中南米 医療・健康(健康管理、保健産業、保健用品)、衛生・美容、アクセサリー、装備、サービス(店舗用設備・機器、ディスプレイ) 2015年度350 社 毎年
National Pet Show 欧州・CIS ペット用品、里親募集 140社 毎年
Zoosphere 欧州・CIS 用品、美容サービス 2015年度200社 毎年
Pet Expo 日本 用品(リード、運搬用品、衛生用品、シャワー用品、美容用品、保険、おもちゃ、掃除用品 服・ファッション フード(おやつ、離乳食) 各種イベント(運動会、美容教室、相談室、お見合い、マナーレッスン) 日本最大 予想参加者数6万人 毎年

出展:韓国・農林畜産食品部「ペット関連産業の分析及び発展方向の研究」(2016)


< 本稿の内容は、筆者の個人的見解であり、 必ずしもKOTRAが所属する組織の見解ではありません。 >


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