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大韓民国の化粧品市場の規模
大韓民国における化粧品市場の規模は、2017年基準で約14兆ウォンと推算されている。これは世界で8番目の規模で、イタリアやロシアより大きく、フランス市場にも肩を並べるほどである。韓国の化粧品産業は、2010年以降、中国化粧品市場の成長を機に急激に成長している主要産業群の1つとして挙げられる。
<表 1> 世界化粧品市場の規模
順位 | 国家名 | 2015年 | 2016年 | 2017年(E) | 2018年(E) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
金額 | シェア | 金額 | シェア | 金額 | シェア | 金額 | シェア | ||
1 | アメリカ | 67,469 | 19.4 | 70,645 | 19.4 | 74,124 | 19.2 | 77,315 | 18.9 |
2 | 中国 | 41,178 | 11.8 | 43,632 | 12.0 | 46,912 | 12.2 | 50,631 | 12.4 |
3 | 日本 | 32,436 | 9.3 | 32,742 | 9.0 | 33,573 | 8.7 | 34,308 | 8.4 |
4 | ブラジル | 22,760 | 6.5 | 23,510 | 6.4 | 25,630 | 6.6 | 28,162 | 6.9 |
5 | ドイツ | 14,767 | 4.2 | 15,034 | 4.1 | 15,420 | 4.0 | 15,811 | 3.9 |
6 | イギリス | 13,663 | 3.9 | 14,188 | 3.9 | 14,875 | 3.9 | 15,670 | 3.8 |
7 | フランス | 12,368 | 3.6 | 12,278 | 3.4 | 12,444 | 3.2 | 12,690 | 3.1 |
8 | 韓国 | 10,435 | 3.0 | 10,926 | 3.0 | 11,495 | 3.0 | 12,059 | 2.9 |
9 | イタリア | 8,863 | 2.5 | 8,937 | 2.4 | 9,083 | 2.4 | 9,263 | 2.3 |
10 | ロシア | 6,741 | 1.9 | 7,420 | 2.0 | 7,939 | 2.1 | 8,501 | 2.1 |
世界 | 348,370 | 364,928 | 385,894 | 408,792 |
* 出所 : Beauty & Personal Care Euromonitor(2018), 韓国保健産業振興院(2018)
* 韓国化粧品基準を適用, (E)は予測値
特に、韓国における化粧品市場規模のバロメーターといえる「年度別化粧品生産額」が2017年に13兆5千億ウォンを記録し、2013年の7兆9千億ウォンと比べて約70%も急成長するなど、どの産業群よりもダイナミックな成長を示している。
<表 2> 韓国の化粧品年度別生産実績
(単位 : 億ウォン, %)
区分 | ‘11年 | ‘12年 | ‘13年 | ‘14年 | ‘15年 | ‘16年 | ‘17年 | ‘12~’16年 CAGR |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
総生産 | 63,856 | 71,227 | 79,721 | 89,704 | 107,328 | 130,510 | 135,155 | - |
前年比成長率 | 6.17 | 11.54 | 11.92 | 12.52 | 19.64 | 25.91 | 3.55 | 13.31% |
* 出所 : 食品医薬品安全処(2018、生産実績資料、各年度)
市場の成長と共に産業規模も拡大していて、2017年には化粧品メーカーが2,000社を超えるなど2014年と比べて約70%も成長しており、また製造販売業者(Brand Holder)は10,000社を超え、2014年と比べて200%以上も増えるなど当該産業が好況期であることを裏付けている。
大韓民国の化粧品輸出の現状
大韓民国の化粧品産業は、2010年初頭までは輸出赤字品目に分類されていたが、中国をはじめとするアジア市場でドラマやK-popなどの韓流ブームに後押しされ、輸出が大幅に拡大した。2017年、韓国化粧品の海外輸出額は49億6千万ドルとなり、2013年と比べると4倍以上の成長を記録、グローバル市場でも化粧品輸出大国として浮上した。
<表 3> 世界の国家別化粧品輸出実績
(単位:百万ドル)
順位 | 国家 | 輸出額 | 年平均 成長率 (5年/%) |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | |||
1 | フランス | 13,994 | 14,532 | 12,682 | 12,928 | 14,863 | 0.5 |
2 | アメリカ | 8,011 | 8,351 | 8,510 | 8,607 | 9,266 | 2.7 |
3 | ドイツ | 8,115 | 8,079 | 6,975 | 7,165 | 7,486 | -3.0 |
4 | 韓国 | 1,219 | 1,854 | 2,848 | 4,087 | 4,860 | 40.3 |
5 | イタリア | 3,776 | 3,931 | 3,762 | 4,290 | 4,784 | 5.1 |
6 | イギリス | 4,461 | 4,680 | 4,097 | 4,083 | 4,261 | -2.1 |
7 | スペイン | 3,183 | 3,301 | 2,959 | 3,154 | 3,625 | 2.3 |
8 | 日本 | 1,392 | 1,438 | 1,717 | 2,464 | 3,313 | 23.2 |
9 | 中国 | 2,195 | 2,346 | 2,688 | 2,709 | 3,259 | 9.4 |
10 | ポーランド | 2,381 | 2,391 | 2,160 | 2,394 | 2,663 | 1.8 |
11 | オランダ | 1,940 | 1,986 | 1,878 | 2,216 | 2,460 | 5.1 |
12 | カナダ | 1,528 | 1,580 | 1,590 | 1,628 | 1,683 | 1.4 |
* 出所 : UN Data(2018), 大韓化粧品産業研究院(2018)
* 韓国の化粧品基準に従って分類/再輸出入は除く
2017年の輸出実績ベースでは、大韓民国は世界で4番目に化粧品を海外に販売する国となり、これは化粧品産業大国として知られるイタリア、日本などより高い順位となっている。ここ5年間の国別輸出成長率を見ると、その成長ぶりがさらに明確になる。年平均成長率が40%を超えるのは、大韓民国が唯一である。
<表 4> 韓国化粧品の輸出・輸入実績
(単位 : 百万ドル, %)
年度 | 輸出 | 輸入 | 貿易収支 | ||
---|---|---|---|---|---|
輸出金額 | 前年比 増減 |
輸出金額 | 前年比 増減 |
||
2013年 | 1,231 | 25.9 | 1,275 | 2.9 | △44 |
2014年 | 1,873 | 52.2 | 1,386 | 8.7 | 487 |
2015年 | 2,910 | 55.3 | 1,397 | 0.8 | 1,513 |
2016年 | 4,183 | 43.7 | 1,433 | 2.6 | 2,750 |
2017年 | 4,952 | 18.4 | 1,523 | 6.3 | 3,429 |
2018年(1~11月) | 5,808 | - | 1,486 | - | 4,322 |
* 出所 : 関税庁、大韓化粧品産業研究院(2018、韓国の化粧品分類基準を適用)
※この5年間(‘13年~’17年)の年平均増加率(CAGR)━輸出:41.6%/輸入:4.5%)
今年1月~11月までの化粧品輸出額(暫定値)は約58億ドルと、すでに昨年の49億ドルを上回っていて、貿易収支も昨年に続き史上最高記録を更新するものと予想されている。
大韓民国の化粧品産業の成長要因と今後の見通し
世界の化粧品市場は、公式な集計が行われて以来毎年成長を続け、今後も成長潜在力の非常に高い未来有望産業といえる。K-beautyは数多くの強みからここ数年間グローバル化粧品市場をけん引しており、今後も着実に成長するとみられる。その理由は、以下のとおりである。
まずは「中国」の健在がある。中国市長と中国の消費者は、もはやK-beauty消費の根幹をなしている。中国はこの5年間、年平均5.5%の成長を果たしただけでなく、今後の成長余力も大きいため、中国市場に多くの部分を依存している韓国化粧品産業には好材料として挙げられる。2016年に韓国がフランスを抜いて中国における最大の化粧品輸入相手国になって以来、外交的な対立からしばらくその地位が揺らいだこともあったが、その後すぐに第1位の座を取り戻すなど、中国における韓国化粧品の人気はいまだに高いといえる。韓国化粧品の購入における「買い手筋」と呼ばれた団体観光客の数も、外交的な対立を経てからその後着実に回復しつつあり、今後はプラス要素として働くものとみられる。
二つ目に、中国以外の輸出市場の成長である。一時、韓国の化粧品輸出で中華圏が占める割合が70%に迫り、輸出多角化を強調する意見が高まったのだが、最近では中国や東南アジア(ASEAN)だけでなく、日本・アメリカ・ロシア・フランスなど様々な国で韓国化粧品の人気が高まっている。特に、急激に成長している新興国では経済成長により中産層が増え、先進市場では若年層や男性、高齢者など化粧品消費者の幅が拡大している。
<表 5> 主要国における韓国化粧品の輸出実績
(単位 : 百万ドル, %)
順位 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
国家 | 金額 | シェア | 国家 | 金額 | シェア | 国家 | 金額 | シェア | |
1 | 中国 | 1,172 | 40.3 | 中国 | 1,570 | 37.5 | 中国 | 1,937 | 39.1 |
2 | 香港 | 687 | 23.6 | 香港 | 1,248 | 29.8 | 香港 | 1,222 | 24.7 |
3 | アメリカ | 238 | 8.2 | アメリカ | 347 | 8.3 | アメリカ | 449 | 9.1 |
4 | 台湾 | 139 | 4.8 | 日本 | 183 | 4.4 | 日本 | 225 | 4.5 |
5 | 日本 | 138 | 4.7 | 台湾 | 136 | 3.3 | 台湾 | 154 | 3.1 |
6 | 台湾 | 93 | 3.2 | 台湾 | 118 | 2.8 | 台湾 | 151 | 3.0 |
7 | シンガポール | 66 | 2.3 | シンガポール | 94 | 2.2 | ベトナム | 141 | 2.8 |
8 | ベトナム | 54 | 1.8 | ベトナム | 71 | 1.7 | シンガポール | 104 | 2.1 |
9 | マレーシア | 48 | 1.6 | マレーシア | 61 | 1.5 | ロシア | 96 | 1.9 |
10 | ロシア | 36 | 1.2 | ロシア | 48 | 1.1 | マレーシア | 67 | 1.3 |
合計 (125カ国) |
2,910 | 100.0 | 合計 (122カ国) |
4,183 | 100.0 | 合計 (128カ国) |
4,952 | 100.0 |
* 関税庁、大韓化粧品産業研究院(2018、韓国の化粧品分類基準を適用)
三つ目に、SNSとモバイルの力で拡大した新韓流ブームは、K-beautyを世界により広く発信する見込みである。オンラインメディアが本格的に成長する前、主にテレビなどの伝統的なメディアを通じてミレニアル世代主導で伝播された第1世代韓流に対し、最近ではポストミレニアル世代がモバイルとSNSで拡散させる、急激に変化する新しい韓流が世界のトレンドをリードすることになったのである。また、オンラインによる韓流の影響は以前より強力なものとなり、アジアの他に北米・欧州・南米などでもその影響力を拡大している。また、韓国の美しさを象徴するK-beautyと韓国化粧品が同時に知られるようになり、韓国の製品を使用したがる消費者もさらに増えている。
四番目に、韓国市場はアジア市場進出における足掛かりの役割を果たすことになる。化粧品ブランドの買収・合併(M&A)は、グローバル企業がその市場に効果的に参入するための方法として取り入れることがあるが、韓国は韓国市場だけでなく中国などのアジア市場に効果的に参入するための架け橋としての役割を果たしている。最近、韓国のいくつの化粧品企業がグローバル企業に買収されるなど韓国では化粧品産業の再編が加速しており、カーバーコリア(Carver Korea)とスタイルナンダ(Style Nanda)はそれぞれユニリーバ(Unilever)とロレアル(Loreal)に買収された。これは、それだけ韓国の化粧品市場と産業がグローバル市場で魅力的な投資先として評価されていることを裏付ける例で、中国などアジア市場の成長と共に韓国市場の市場性も拡大することを意味する。
最後に、政府の投資や支援によって産業の成長が加速することが挙げられる。現在、韓国政府は韓国の化粧品産業がグローバル市場で競争力を持てるよう、研究開発(R&D)はもちろん、多様な直接・間接の輸出支援策などを多角的かつ積極的に展開している。特に、産業における規制緩和、中小企業育成の強化が着実に行われるとみられ、韓国内のビジネス環境も改善するものと予想される。
まとめ
本格的に韓国で化粧品産業が成長を始めた2010年初頭、今のような急成長を予想した人は一人もいなかった。しかし、今は時代が変わったのである。今や、一過性に過ぎないトレンドではなく、グローバル化粧品市場の主流(main stream)として定着したK-beauty。化粧品産業を研究する一人として、私も韓国化粧品産業の成長がどこまで続くのか気になるところである。
ソン・ソンミン (mike@kcii.re.kr)
大韓化粧品産業研究院 企画調査チーム 主任研究員
< 本稿の内容は、筆者の個人的見解であり、 必ずしもKOTRAが所属する組織の見解ではありません。 >