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[新再生可能エネルギー] 韓国エネルギー貯蔵技術(ESS)産業の現況及び展望
作成日
2019.12.27

政府主導の再生可能エネルギー政策で韓国のESS1)産業は類を見ない成長を記録している。


紹介


エネルギー貯蔵技術(ESS)は、すでに発生したエネルギーを後で使うために貯蔵することを指す。ESSとは、二次電池に分類される従来の鉛蓄電池、あるいはリチウムイオン電池とエネルギー管理システム(EMS)、電力変換装置(PCS)のような制御部から構成される。
世界的にESS導入の割合は大幅に増加し、2014年0.7 GWhに過ぎなかった生産量が2018年4.8 GWhまで成長しており、今後2025年にはおよそ70.5 GWhに達するものと推定されている。
2017年の世界ESS市場規模は約24億2,000万ドルと推算される。2020年には150億ドル、2025年には190億ドル程度に拡大する見込みで、当該期間内の年平均成長率は30%水準を維持することが期待されている。
このような成長可能性への期待感から、現在の貯蔵型(バッテリータイプ)ESSが活発に導入されている。特に、電力効率性とともに、エコ技術として注目されているリチウムイオンバッテリーの場合、市場規模が2016年1.8 GWhで2020年8.5 GWh、2024年16.2 GWhの水準に拡大されるとみられる。


米国の2/3に達する韓国ESSの累積生産需要量(2018年現在)


2018年現在、韓国のESS設備水準は2.91 GWh上昇して世界の年間設備率の10%に達する3.63 GWhを記録した。累積生産需要量の場合、米国の2/3に過ぎないが、韓国の国土面積が米国の1%に過ぎないことを考慮すれば、このような収容能力はまさに驚異的な水準といえる。
特に、韓国のリチウムイオンバッテリーの生産は世界最高水準であり、現在も急速に増加している。LG化学、サムスンSDI、SKイノベーションなど、主要企業の総生産能力は現在65 GWhであり、2023年には326 GWhまで上昇し、同期間内の年平均成長率が50%まで達すると予想している。


主要国の年間ESS設備順位(2018年)

主要国の年間ESS設備順位
順位 割合(%)
1 米国 36.8
2 ドイツ 12.7
3 日本 11.8
4 オーストラリア 11.0
5 韓国 10.2
6 英国 3.4
7 イタリア 2.7
8 中国 2.6
その他 8.8
合計 100
*出所:DOE、ハナ金融経営研究所(2019)

相対的に脆弱な韓国のESS競争力


韓国のESS産業は世界市場で大きな割合を占めているが、全般的な技術競争力は主要グローバル企業より相対的に劣ると評価されている。源泉技術部門において、韓国の競争力は世界最高水準の技術力(100%基準)と比べ、82~85%に過ぎず、部品や素材の競争力は79~84%に達したことが分かった。製造技術は高い方で約88%を記録した。

しかし、韓国ESS産業の価格はグローバルライバル会社と比べると約25~27%程度高く、国内ESS設備の力量の爆発的な増加傾向にもかかわらず、技術的不安定などの要因によって一部ESS施設で火災が発生する事故もあった。このような状況で2018年半ばからLG化学やサムスンSDIの販売実績が目立って下落すると、サムスンSDIはシステムの安全確保に向けて約2,000億ウォンの投資を断行すると発表した。一部では2020年に当該企業の販売不振が解消されるものと予測している。


ESSの規模別競争力比較(2017)

ESSの規模別競争力比較(2017)
種類 主要企業 競争力
(最高水準=100)
価格
(USD/MWh3))
海外 国内 源泉技術 部品/素材 製造技術 海外 国内 格差
中/大型 ABB, SMA/
Younicos, Parker
曉星、ポスコ、インテクFA 82 79 88 950 700 27%
PCS SMA, Schneider, Panasonic/
Nichicon, Ideal Power/
Outback
インテクFA、セバン
国際 com.
T-ファクトリー、ユージンエナファーム
85 84 88 390 490 25%
*出所:INI R&C(2017)、ESS産業生態系強化に向けた戦略や支援策(2017、3)

グローバル市場を攻略している韓国の主要企業


韓国の主要ESS企業はグローバル市場で活躍している。LG化学とサムスンSDIを先頭にハンファエナジー、LS産電などが太陽光とエネルギー管理システムを結合した新しいビジネスモデルを開発中であり、当該技術が産業現場で実際に適用されるよう韓国の主要電力供給会社である韓国電力公社(KEPCO)と協力を図っている。

電力変換装置(PCS)はESS事業の25%以上を占めるほど核心的だ。該当分野ではデスティンパワー(Destin Power)が活躍しており、一時は韓国の中堅二次電池メーカーだったが、イスラエルに買収されたコカム(Kokam)はブルームバーグでグローバル企業に選ばれた。
最近は、ドイツのフォルクスワーゲン(Volkswagen Group)が今後10年間電気自動車2,200万台に使用されるバッテリー供給に向けてLG化学、サムスンSDIおよびSKイノベーションなどと業務協約を締結することにした。


韓国/海外ESS企業の最近の事業活動

韓国/海外ESS企業の最近の事業活動
企業 事業内容/戦略
LG化学 - 2017年12月まで全世界で累積生産受容量3.8GWh達成
-10年間フォルクスワーゲンの電気自動車バッテリー供給予定(計2千2百万台)
サムスンSDI - 2017年2月カリフォルニアに240MWh供給(ESS設備受容の70%)
-ESS設備確保に向けて2千億ウォン投資
-10年間フォルクスワーゲンの電気自動車バッテリー供給予定(計2千2百万台)
SKイノベーション - ESS事業開発を推進、新たなESSソリューション開発発表
-2022年まで北米地域フォルクスワーゲンの電気自動車バッテリー供給予定
ハンファエナジー -2019年1月現在、ハワイ電力(HECO)主管のハイブリッド融合型ESS(55MW+ESS208MWh)の最終契約締結(事業規模:約1億4千万ドル)
斗山重工業 -カリフォルニア州の世界太陽エネルギー/ESSカンファレンスで今年のESSプロジェクト選定
SK D&D -韓国最高の開発企業
-8地域で70MWh生産規模の産業用ESS施設運用
-電力管理システム(PMS)専門企業のGridWizとの戦略的パートナーシップを基にESS技術の差別化に集中
デスティンパワー - 2017年178億ウォンから2018年540億ウォンまで売上拡大
コカム -全世界で累積生産受容量237MW達成
-イスラエル太陽光供給会社であるソーラーエッジテクノロジー(SolarEdge)に買収
-1千億ウォン規模の投資を通じて120MWhから1GWhに生産受容量拡大を推進
韓国電力公社 -2017年11月現在、世界最大規模(376MW)周波数調整用をESS構築

韓国政府のESS需要や技術開発支援


産業通商資源部は、公共施設内のESS設備の義務付け、特例料金政策など、韓国のESS需要拡大のための様々な支援策を導入している。これにより公共機関の場合、1MW以上の契約電力は義務的にESSシステム導入の割合を最小5%と規定している。最近、韓国政府は第4次エネルギー技術開発計画を策定し、韓国ESS産業の素材競争力をさらに向上できる新規エネルギー物質の確保など新たなエネルギー技術開発支援に先頭に立っている。


クァク・デゾン 研究員(djgwak@kiet.re.kr)
韓国産業研究院(KIET)



脚注

1)エネルギー貯蔵技術(Energy Storage System):本文では以下「ESS」と指す
2) GWh:ギガワット時
3) MWh:メガワット時

< 本稿の内容は、筆者の個人的見解であり、必ずしもKOTRAが所属する組織の見解ではありません。 >

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