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[ICT] [ICT] スマート工場の導入による製造強国の地位向上
作成日
2021.03.04





韓国は名実ともに製造輸出大国として、2020年12月の雇用行政統計(EIS)によると、34万9千社以上の製造業事業体が素材、部品、モジュール、完成品、装備などを生産している。スマート工場は、製品企画-設計-生産-流通という製造過程において、センサーとモノのインターネットを通じて取得したビッグデータ基盤の人工知能最適化ソリューションを積極的に活用する知能型生産システムを備えた事業体を意味する。このようなスマート工場は、最先端デジタル技術を総合的に活用し、製造業の生産効率化や市場拡大を通じた価値創出を目指し、民間と政府が積極的に進めている第4次産業革命の核心に当たる。デジタルインフラは世界1位であり、製造業競争力5位の韓国は、このようなスマート工場を最も先導的に実現する総合的な環境を構築しているといえる。


▶ スマート工場とは?

韓国政府のスマート製造革新推進団は、スマート工場を「製品の企画から販売まで全ての生産過程をICT技術で統合し、最小の費用と時間でカスタマイズされた製品を生産する人材中心の先端知能型工場」と定義する。既存の生産過程で工程処理の手順が複雑になったり、原材料や部品の在庫が不足したり、装備を適時に修理しなかったため生産過程で支障が生じ、時間とコストが浪費される場合が多いものの、これをAI基盤の最適化によって効率性を高めることができる。デジタルツインに代表される仮想空間で新製品の製作過程をシミュレーションしてみながら、どこで問題が発生するのかをチェックすることもできる。また、設備-資材-システム間のデータをリアルタイムで交換し、不良率を画期的に減らし、生産が完了する場合、自動的に受発注が行われるようにして在庫コストの削減効果もある。スマート工場の導入効果はコストを削減し生産速度を向上させることに限らず、どのような商品に需要があるのかをビッグデータを基に把握して新しい製品を開発し、顧客のニーズに合わせて多品種少量生産を実現することまで包括する。


▶スマート工場導入による価値創出効果の確認

韓国の中小・中堅企業を対象にスマート工場の経済的効果を確認するために産業研究院が実施した実態調査(2019)によると、スマート製造システムを導入した企業の生産性が大きく改善されたことが確認できる。韓国の中小メーカーは、スマート製造システム導入後、製造コスト削減、納期短縮、在庫減少、不良率改善、意思決定時間の短縮などの効果が生じ、これは結果的に稼動率、生産量、1人当たり生産量の増加につながった。しかし、スマート製造システム導入後も、製品の技術力向上、製品品目数の拡大、納品企業数の増加の効果はないことが実態調査で確認された。つまり、製品の生産段階での最適化を通じた工程革新は比較的容易に達成できた反面、マーケティング・需要者のニーズに合わせた製品開発・技術革新といった製品革新の側面では、スマート工場システムがまだその役割を十分に果たしていないことが分かる。


▶韓国のスマート製造供給企業は制限的

韓国のスマート製造ソリューションを提供する供給企業に対する分析のため、産業研究院が実施したもう一つの実態調査(2019)によると、韓国のスマート製造ソリューション供給企業は製造実行システム(MES)と企業資源管理システム(ERP)が中心で、単一部品を生産する設備企業の割合も高いことが分かった。現在、AR・VR、CPS、製造ロボットといったソフトウェアは米国製品の割合が高く、自動移送ロボット、スマートセンサーといった部品は日本、ドイツ、中国への依存度が高い状態となっている。



▶政府の製造業スマート化戦略

<中小企業スマート産業団地>


時期 スマート産業団地の現況 国家予算
2019年 ⦁マート産業団地事業団が本格稼動
- (昌原)機械・電子産業への集積度が大きく、大学および企業研究所との連携を期待
- (半月・始華) 部品・基幹企業18,000社以上が集中され、スマートシティ(始興)との連携期待
1,858億ウォン(該当)
+ 追加支援
2020年 ⦁スマート産業団地の追加選定
- (亀尾)電気・電子産業の割合が高く、素材・部品クラスターとして育成計画
- (南東)中小企業6,685社が集中され、スマート工場の普及実績が優れてスマートシティ(松島)との
交通・物流・インフラとの連携期待 ⦁スマート産業団地の追加公募中
7,912億ウォン(23年まで)
~2022년 ⦁スマート産業団地10ヵ所まで拡大 -
~2030년 ⦁「製造業ルネッサンスビジョン及び戦略」により20ヵ所まで拡大 -


* 資料:産業通商資源部、スマート産業団地政策説明



韓国政府は2018年12月に「中小企業スマート製造革新戦略」を通じ、中小企業のスマート製造革新による製造大国を維持する政策ビジョンを策定した。2022年まで3万社の中小企業のスマート化を図り、設備投資資金2兆ウォンと3,000億ウォン規模のファンドを造成した。具体的には、①スマート産業団地企画団を構成して2022年まで10のスマート産業団地を造成し、労働者の生活の質の向上と新産業動力の確保を図り、②既存産業団地内の製造革新のための産学研ネットワークを構築し、③地域適合型の労働者向け空間の造成と④規制ネガティブゾーンの導入および新再生可能エネルギーインフラの構築などを通じてスマート産業団地の安定化を図っている。



< AI·ビッグデータベースの中小企業製造革新の高度化戦略 >


* 出所:韓国政策ブリーフィング、政策ウィキ、スマート工場(知能型工場)



また、政府は2020年7月に「AI・ビッグデータ基盤の中小企業製造革新高度化戦略」を発表したものの、そのうち中小ベンチャー製造プラットフォーム(KAMP)は現在、韓国のスマート工場の成果が微々たるものである製品革新領域を攻略するための政策だ。マイ製造データ体系を構築し、人工知能を通じた新しい製品開発および革新を通じて製造革新先導ケースを拡大することがその目標であり、このための設備、ソフトウェア、部品、完成品などのスマートプラットフォームの需要が増加すると予想される。スマート工場を導入しようとする国内の中小・中堅企業は、「スマート工場構築および高度化」、「データインフラ構築事業」、「スマートマイスター」、「工程・品質技術開発」などの政策支援を通じ、スマート工場の新規構築費用やAIコンサルティング、技術検証、専門人材、R&D資金などを支援することができる。

このように政府の積極的なスマート工場拡大支援政策をもとに、SAP、シーメンス、ボッシュ、ペストなどのドイツ企業と米国のロックウェル・オートメーション、日本の三菱電機などが韓国でデジタルファクトリーソリューションを積極的に広報し、その規模を拡大している。スマート工場の成功は、コスト削減による事業体の利益拡大のみならず、労働者の作業環境の安全性確保や質の高い雇用創出と連携している。反復労働を単純に代替するレベルの生産性の改善のない機械化ではなく、新しいビジネスチャンスや需要先の確保、商品競争力の強化、生産効率化を追求するスマート工場は、雇用の量の拡大と質の向上をもたらす労働革新戦略だ。さらに、地域の均衡発展とスマートシティとの連携までを考慮した「スマート産業団地」推進の成功に向け、政府の主要省庁が総合的な努力を続けるものと予想される。


出所:1 チョン・ウンミ(2019)、「韓国型スマート製造戦略研究」 3章-2. 韓国中小・中堅企業のスマート製造構築実態の分析、pp.123~156. 2 チョン・ウンミ(2019)、「韓国型スマート製造戦略の研究」 4章-2. 韓国スマート製造供給部門の現況、pp.176~210.




キル・ウンソン副研究委員(egil@kiet.re.k)、産業研究院産業政策研究本部産業雇用政策室
Eunsun Gil, Associate Research Fellow (egil@kiet.re.kr), Korea Institute for Industrial Economics & Trade



< 本稿の内容は、筆者の個人的見解であり、必ずしもKOTRAの見解ではありません。>


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