ロボットは少子高齢化など人口構造の変化に対応して産業生産性向上を促進し、障害者や社会的弱者の利便性向上を通じ生活の質を向上させる。最近、新型ウイルスコロナ感染拡大の影響で非対面経済の実現主体としてロボットの役割が拡大している。これに対し、これまで状況をうかがっていたサムスン電子、LG電子、現代自動車など韓国の大企業がロボットを次世代有望産業と認識し、本格的な投資を行っている。これと共に韓国政府は2008年「知能型ロボット開発および普及促進法」制定後、3回(2009年、2014年、2019年)にわたって知能型ロボット基本計画を策定し体系的にロボット産業育成政策を施行している。
韓国のロボット密度、世界トップ
韓国ロボット産業は2020年5.5兆ウォンで年平均5.4%で成長傾向であり、サービス用ロボット市場の急成長で市場全体は前年比2.6%増加した。労働者1万人あたりロボット活用台数を意味するロボット密度は、2020年韓国が932台で世界1位を占め、販売量では世界4位の製造用ロボット市場規模を占めた。これは韓国自動車や半導体、電子産業など特定分野における製造用ロボット普及が密集しているためだ。2020年の製造用ロボットは、コロナ禍の長期化による主要需要産業の投資萎縮で前年比2.7%減の2.9兆ウォンを記録した。
韓国ロボット市場における製造用ロボットの割合は77%で、2018年、2019年の83.7%、82.2%に比べては減少したものの、世界ロボット市場の56.5%に比べれば、圧倒的に製造用ロボットが高い。全体558社のうち売上高1千億ウォン以上の企業は5社であり、100億ウォン未満の中小企業は514社で全体の92.1%となる。
2020年サービス用ロボットは高性能・高価格の手術ロボットの商品化拡大および家事労働軽減のための清掃ロボットの売上拡大で前年比34.9%増の0.8兆ウォンを記録した。全体458社のうち売上500億ウォン以上の企業は2社(LG電子、サムスン電子)、50億ウォン未満の中小企業は437社で全体の95.4%を占めた。2020年の韓国ロボットの輸出額は半導体製造用ロボットの輸出拡大で前年比5.2%増加した1.1兆ウォン、輸入額は部品輸入減少で前年比11.6%減の0.5兆ウォンを記録した。2020年の事業体数は前年比8.6%減の2,427社であり、6年間年平均5%増加した。
韓国ロボット市場の売上推移
단위 : 억원, %
한국 로봇시장 매출 추이
|
2015 |
2016 |
2017 |
2018 |
2019 |
2020 |
年平均成長率 (‘15~’20) |
全体 |
42,169 |
45,972 |
55,255 |
58,019 |
53,351 |
54,736 |
5.4 |
|
製造用ロボット |
25,831 |
27,009 |
34,017 |
34,202 |
29,443 |
28,658 |
0.6 |
サービス用ロボット |
6,277 |
7,464 |
6,459 |
6,650 |
6,358 |
8,577 |
6.4 |
ロケット部品 |
10,061 |
11,499 |
14,779 |
17,167 |
17,550 |
17,501 |
11.7 |
※ 資料:産業通商資源部・韓国ロボット産業振興院・韓国ロボット産業協会、2020ロボット産業実態調査、2021.12
韓国の大企業、ロボットを次世代の重要産業と認識し、本格的な投資
2021年12月、サムスン電子がロボット事業チームを新設し、本格的にロボット市場に進出すると発表した。LG電子もロボット事業に進出し、ロボスターを買収したり、ロボティズ、アンジェロボティクスのロボット企業の持分投資を通じロボット事業を拡大している。現代自動車も世界的なロボット企業であるボストン・ダイナミクスの株式80%を約1兆ウォンで買収し、ロボット事業に本格的に進出した。ボストン・ダイナミクスは、4足歩行ロボット、ヒューマノイドロボット、物流ロボットを基盤に、従来の現代自動車のウェアラブルロボット、自動運転車、都市型航空モビリティ(UAM)およびスマートファクトリー技術との相乗効果を狙っている。またKT、SK、LGユープラスなど移動通信会社もAI・ビッグデータ・クラウド能力を融合して未来サービス用ロボット市場をリードするという狙いで、攻撃的にロボット事業進出を加速化している。
韓国政府、ロボット法制定後、採界的なロボット産業支援基盤構築へ
韓国政府は、体系的かつ一貫性のあるロボット産業支援基盤構築のため、2008年「知能型ロボット開発及び普及促進法」を制定した。同法に基づき、第1次、第2次基本計画を策定してロボット産業振興院を設立(2010年)し、ロボット事業を発掘し2011年からロボット産業支援を本格化し始め、第2次基本計画(2014~2018年)の終了に伴い、2019年から第3次知能型ロボット基本計画(2019~2023)を策定・推進している。
ロボット産業の技術レベルを早く向上させるため、この10年間ロボット技術R&Dに約6,000億ウォン以上を投入し、開発されたロボットのテスト・認証、実証、企業支援のための7大拠点を構築し、産学融合促進法を改正して規制サンドボックス制度を導入した。7大拠点センターは、ロボット認証センター(大邱)、安全ロボット・水中ロボット複合センター(慶北)、製造ロボット技術センター(慶南)、海洋ロボットセンター(釜山)、ヘルスケアロボットセンター(光州)、ロボット産業化支援センター(大田)、融合部品センター(富川)などだ。
全産業のロボット転換基盤支援
韓国政府は、相乗効果が大きい航空、造船、化学などでロボット活用モデルを追加開発し、従来モデル開発の適用拡大を通じ製造産業全般のスマート化を促進する計画だ。サービング、料理、教育の非対面・アンタクト需要に合わせた新ビジネスモデルの発掘や需要者問題解決のためのロボットサービスモデルを拡大支援する計画だ。合わせてロボット特化保険、リース・レンタルの民間中心金融支援モデルの開発や支援を通じて全方位的ロボット需要増加を誘導し、また少子高齢化など社会問題解決および国民生活密接施設を中心に大規模ロボット融合サービス実証を展開していく計画だ。また、単独世帯の生活利便性向上のための家庭ヘルスケアロボット、パートナーロボットなど日常適合型ロボット普及も強化する。規制革新ロードマップの支障のない段階的履行を通じ先制的現場規制改善持続および新製品の円滑なビジネス環境を構築し、5G・AI・ビッグデータなど先端技術が融合した高付加価値ロボット製品の商用化促進のために実証インフラおよび技術支援システムを構築していく計画だ。
<本稿の内容は、筆者の個人的見解であり、必ずしもKOTRAの見解ではありません。>