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韓国の観光産業の現状
コロナ禍前の水準を回復した韓国の観光産業はデジタル基盤の構造変化が進んでいる

2023年の観光産業全体の売上は24.4兆ウォンで前年比40.5%増加し、これはコロナ禍前の2019年水準の約90.9%に該当する(文化体育観光部、2024)。これはパンデミック期間中に急減していた観光需要が本格的に回復の局面に入っていることを意味する。観光産業の業種別売上高(2023年基準)を見ると、観光宿泊業が約10.6兆ウォンで最も高い割合を占めており、次に旅行業3.9兆ウォン、カジノ業2.7兆ウォンの順となっている(文化体育観光部、2024)。年度別の売上高の推移を見ると、2023年の売上高が回復していない業種は旅行業、カジノ業、国際会議業となっている。つまり、韓国の観光事業体は首都圏に集中されており、観光産業の売上は宿泊業を中心にコロナ禍前の水準を回復する流れとなっている。
区分 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | ’19年比 ’23年増減率 |
前年比 ’23年増減率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
全体 | 26.8 | 8.2 | 10.5 | 17.4 | 24.4 | -9.1 | 40.5 |
旅行業 | 8.6 | 0.4 | 0.4 | 1.4 | 3.9 | -54.6 | 188.4 |
観光宿泊業 | 8.4 | 4.0 | 5.6 | 8.8 | 10.6 | 26.2 | 20.2 |
観光客利用施設業 | 1.1 | 0.7 | 0.8 | 1.2 | 1.4 | 29.0 | 16.3 |
国際会議業 | 1.5 | 0.4 | 0.6 | 0.9 | 1.4 | -6.7 | 59.8 |
カジノ業 | 2.9 | 1.0 | 1.2 | 1.9 | 2.7 | -6.9 | 40.7 |
遊園施設業 | 2.1 | 0.6 | 0.6 | 1.6 | 2.2 | 3.2 | 39.5 |
観光便宜施設業 | 2.1 | 1.2 | 1.3 | 1.6 | 2.2 | 0.3 | 33.8 |

市場展望と政府の観光産業育成政策
グローバル競争力の強化と持続可能な成長が観光産業政策の鍵
観光産業は人工知能をはじめとする新技術の活用、持続可能な観光に対する需要増、新規観光地に対する関心の拡大、価値消費中心の消費トレンドの拡散といった変化を経験しており(UN Tourism、2025)、このような変化に合わせた観光商品やサービス、関連企業の成長が見込まれる。また、グローバルOTAの影響力は持続的に強くなることが予想される。彼らはプラットフォームを通じて確保した膨大なユーザー基盤やデータ、資本力、高度化された個人化サービス、グローバルネットワークなどに基づいて観光流通チャンネル内での優位を固めている(アン・ヒジャ、ハン・ヒジョン、2024)。このようなプラットフォーム中心の再編は国家間、企業間の競争をより激化させている。それにオンラインコマース、金融、交通などの非観光産業企業も観光市場に積極的に参入しており、産業間の境界も徐々にあいまいになっている。
観光産業は宿泊、交通、ツアー、アクティビティなどの多様な供給者との有機的な連結を通じて作動し、観光客の消費は地域経済の活性化や雇用創出にも直結する。よって観光は国や 地域経済に重要な役割をする中核産業として認識されている(アン・ヒジャ、ハン・ヒジョン、2024)。
このような変化に備えて韓国政府はK-コンテンツ(音楽、食べ物、文化など)と連携した体験型観光の育成、人工知能及びビッグデータ基盤のスマート観光の拡大、ウェルネスやグルメなどの高付加価値観光コンテンツの高度化を主要政策方向に設定している。それとともに政府は外国人観光客の誘致拡大、観光ベンチャー及び地域観光企業の成長支援、観光インフラのデジタルトランスフォーメーションと高度化など総合的な政策手段を通じて観光産業の持続可能性とグローバル競争力を高めるために努力している。
海外企業の韓国進出の事例
直接参入以外にもマリオット、ヒルトン、アコーなどのグローバルホテルチェーンは国内の主要都市で、ブランドを活用したフランチャイズまたは運営委託方式で持続的に事業を拡大しつつある。最近、韓国の観光企業はグローバル航空会社、ICT企業などとのコラボレーションを通じて海外進出を拡大しており、K-観光スタートアップのグローバル連結性も強化されている傾向にある(毎日経済、2023.10.17.)。
一方、一部の外国人投資プロジェクトは事業性不足、許認可遅延などの問題で成り立たなくなる事例も発生しており、制度的な補完や安定的な投資環境の造成が持続的に求められている。
韓熙貞(ハン・ヒジョン)(hjhan@kcti.re.kr)
韓国文化観光研究院 観光産業研究室副研究委員
<本稿の内容は、筆者の個人的見解であり、必ずしもKOTRAの見解ではありません。>
参考文献
毎日経済(2023.10.11.)。500社海外投資誘致「進撃のK観光ベンチャー」https://www.mk.co.kr/news/culture/10847610
文化体育観光部(2020-2024)。各年度国民旅行調査
文化体育観光部(2020-2024)。2019-2023年基準観光産業調査
文化体育観光部(2025.03.31.)。2024国民旅行調査第4四半期結果(暫定値)
アン・ヒジャ、ハン・ヒジョン(2024)。 最近OTA(オンライン旅行会社)市場動向分析及び政策課題。韓国文化観光研究院
UN Tourism(2025). World Tourism Barometer, 23(1).
観光知識情報システム(https://know.tour.go.kr/)